図2-4 A問題 図2-5 B問題 58 図2-3 算数科での授業デザインシート活用例 プチャートなどにして明瞭な形で表現する(アルゴリズム的思考)ことである。 このように,数学的に考える資質・能力とプログラミング的思考は共通する部分がある。プログラミング的思考を算数科の授業の中で意図的に浮き上がらせることで,より数学的に考える資質・能力が意識され,子どもたちにどのように思考させたいのかを明確にした教材研究や授業実践が為されるようになるのではないだろうか。その様にして作成した授業デザインシートの例を以下の図2-3に示す。 この授業デザインシートは,5年生算数科「合同な図形」のものである。ここでは合同な図形を描く三つの手順を関連付けて統合的に考えることを抽象化することと捉えて,共通点を考える活動としている。 授業の詳細は第3章3節1項で行うが,このようにプログラミング的思考と教科の見方・考え方や育みたい資質・能力の共通点を考えた教材研究の結果,子どもたちへの指示や承認も「考えてみよう。」や「よく考えたね。」といった曖昧なものではなくなり,より具体的になる。「手順を考えて,順番がわかるように表してみよう。」や「共通点を見つけて,きまりを考えよう。」になり,「手順をより簡単に示せたね。」や「面白い共通点を見つけたね。」のようになる。このことは,考えることが苦手な児童にとっては,どのように考えればよいのかのヒントになる。さらに重要なことは,プログラミング的思考を児童に意識させることにつながると小学校 情報教育 8 いうことである。そしてそれは,学んだことの活用を促すことにつながる。 第2節 児童への可視化,意識化 (1)転移の困難さ プログラミング的思考は,プログラミング体験の中で無意識に発揮されればよいというものではない。問題解決能力として,様々な問題を解決する場面に応用されてこそ,その意味がある。では,単にプログラミング体験をすれば応用されようになるのであろうか。 プログラミング的思考のように問題を解決するためのある方略が他の場面に応用されることを転移というが,その困難さが指摘されている。例えば奈須は,平成19年度全国学力・学習状況調査の算数の問題の正答率を例に,転移の困難さを指摘している。以下,図2-4と図2-5にそれらの問題を示す。
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