001総教CR030517R1研究論文(今川)
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78 1.若い世代を中心とした食育の推進 2.多様な暮らしに対応した食育の推進 3.健康寿命の延伸につながる食育の推進 4.食の循環や環境を意識した食育の推進 5.食文化の継承に向けた食育の推進 中学校 食育 2 した食育の推進」がある。20歳代から30歳代の若い世代は,食に関する知識や意識が低く,朝食欠食や栄養の偏りなど,他の世代より多くの課題を抱えている。第三次食育推進基本計画啓発リーフレットには,若い世代が心身共に健康でいるためには,主体的に健全な食生活を実践することに加え,食に関する知識や取組を次世代に伝え繋げていけるよう食育を推進するとしている(5)。また,子どもにも,食生活の乱れや健康に関して懸念される事項(偏った栄養摂取や不規則な食事などの食生活の乱れ,肥満や過度のやせなど)が見られ,増加しつつある生活習慣病と食生活の関係も指摘されている(6)。成長期にある子どもにとって,健全な食生活は健康な心身を育むために欠かせないものであると同時に,将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすものである。また,子どもの頃に身についた食習慣を大人になって改めることは容易ではない。幼い頃から小学生,中学生,そして高校生へと成長する中で,継続的な食育に取り組み,望ましい食習慣を身につけさせることが必要である。 子どもへの食育は家庭が中心となって行うものであるが,近年,核家族化の進展,共働き世帯の増加などの社会環境の変化とそれに伴う孤食の増加等を背景とし,保護者が子どもの食生活を十分に把握し,管理していくことが困難になってきているという現状がある(7)。このような現状を踏まえると,子どもへの食育は家庭を中心としつつ,学校においても積極的に取組を推進していくことが重要である。 (3)中学校における食育の課題 平成29年に告示された学習指導要領総則に,「学校における食育の推進」がこれまで以上に明確に位置づけられ,「食に関する指導の手引―第二次改訂版―」が作成された(8)。子どもの食を取り巻く状況の変化に対応するため,学校における食育の一層の推進を図ることも改訂の目的としている。本市においても食に関する指導を推進しており,これまでに述べた食育の位置づけを念頭に置いた上で, 京都の食文化や食材,地産地消などを踏まえた食育を通じてより良い人生や持続可能な社会の創り手となる子どもを育成するとしている(9)。 本市の中学校では選択制給食を実施している。家庭からの手作り弁当の教育的効果を生かしつつ,中学生の栄養バランスに配慮した食事を提供することを目的として平成15年度から全校で実施され維持のためだけでなく,知育,徳育及び体育の基礎,すなわち生きる力の基礎となるべきものであるということが明らかである。また,食育を通して食事のマナーを学び,食に関わる全ての人や物に感謝の気持ちをもち,さらには環境に配慮した食生活について考えることは,豊かな人間性を育むことにも繋がる。 (2)「食」をめぐる様々な問題 食育基本法が制定された背景には,「食」をめぐる様々な問題が個人の問題ではなく,社会全体の問題として捉えられたことにある。具体的には「食」を大切にする心の欠如,栄養バランスの偏った食事や不規則な食事の増加,肥満や生活習慣病の増加,過度の痩身志向,「食」の安全上の問題の発生,「食」の海外への依存,伝統ある食文化の喪失が挙げられている(3)。このような問題に対する抜本的な対策として,国民運動としての食育を強力に推進するため,食育基本法が制定された。そして,食育基本法に基づき,食育の推進に関する基本的な方針や目標を定めた「食育推進基本計画」が5年毎に策定されている。平成28年度から令和2年度までの5年間を期間とする第三次食育推進基本計画では,これまで取り組んできた成果や課題とめまぐるしく変化する社会の中で明らかになった新たな現状や課題を踏まえ,五つの重点課題を柱とし,取組と施策を推進している。重点課題を以下に示す。 第三次食育推進基本計画では,「食育を国民運動として推進し,食をめぐる様々な課題や目標を解決,達成するためには,国,地方公共団体による取組とともに,学校や保育所等の教育関係者,農林漁業者,食品関連事業者,ボランティアなど,関係者がそれぞれの特性を生かしながら多様かつ緊密に連携・協働していくことが重要である」と位置づけている(4)。食を取り巻く社会環境が変化する中で,それぞれの立場から食育推進のための取組を行うことが必要である。 本来,食育は世代を問わず,国民運動として推進するべきものではあるが,第三次食育推進基本計画で挙げられた重点課題に「若い世代を中心と

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