とを周知することができたと考える。 第4章第1節(2)(p.19)で示した生徒への声かけの内容も含め,休み時間や部活動など様々な場面で意識的に食育が行われていたことが分かる。また,研究協力校のあるクラスの掲示物を見ると,学級通信に朝食調査の内容や担任からのメッセージが盛り込まれていた。このように,様々な教職員がそれぞれの立場から,あらゆる方法で生徒へ食に関するアプローチをしていた。 第2節 研究の課題 本研究では,学校全体で取り組む食育を通して,生徒の食選力の向上を目指した。実践を行う中で,生徒の意識や行動の変容が見られたが,その一方で,生徒の食選力を測ることが困難であった。そのため,意識や行動に変容があった生徒の食選力がどのくらい向上したのかを見取ることができず,それぞれの実践が生徒にどれほどの変容をもたらしたのかが曖昧であった。食選力を数値化したり,評価しやすいものにしたりするなど,より明確なものにすることで,生徒が食生活についてより自分事として捉えることができ,行動に移す動機となると考える。 また,生徒や教職員の実態について,本年度の研究ではより細かい所まで見取ることができなかった。意識や行動に変容が見られた生徒がいたことは見取ることができたが,その変容が起こった理由や動機を明らかにすることが,今後,食育を推進していく上で必要になると考える。 そして,意識や行動の変容について,それらの具体的な内容を分析することで,より生徒の姿が見えてくると考える。例えば,本研究では,朝食に赤の食品より緑の食品を取り入れることが難しい生徒が多い実態であることが分かった。では,緑の食品を取り入れている生徒はどのような方法で緑の食品を取り入れているのかを分析することで,緑の食品を朝食に取り入れる手立てが見えてくるだろう。教職員の食を意識した生徒との関わりについても,どのような関わりをすれば,生徒にどのような効果があるのか等を明らかにしていくことで,いつ,どこで,どのように食育を推進していくかという手立てがより明確になると考える。 また,本研究では,栄養バランスに着目し研究を進めたが,食べる量について考えることも必要である。中学生には,活動や成長に必要なエネル中学校 食育 21 ギーや栄養素をしっかりととることを,栄養バランスを考えて食べることと併せて考えさせなければならない。 第3節 今後の展望 本研究では,学校全体で取り組む食育を通して,生徒の食選力の向上を目指した。食べることは当たり前のことだが,それ故に意識しにくく,また,見えづらいものでもあるだろう。生徒自身も勉強やスポーツの結果に目がいき,その根底にあるものをないがしろにしてしまっている傾向があるのではないだろうか。しかし,充実した学校生活には心身の健康が必要不可欠であり,そのためには健康に良い食習慣が欠かせないということを改めて認識し,学校全体で取り組む食育が積極的に推進されるべきだと考える。 家庭科教員は食に関する内容を取り扱う教科として,知識の定着や学習内容の理解を深めさせることはもちろんだが,専門的な立場として学校全体での食育に積極的に関わっていくことが望まれる。また,生徒が学校生活の様々な場面と家庭科での学びを結び付けて考えることができるよう,生徒が家庭科でどのようなことを学んでいるのかを他の教職員と共有することも必要だろう。その中で他教科との連携を行い,生徒の学びを繋げることもできるのではないだろうか。このように,家庭科教員は教科の特性を生かし,生徒だけでなく教職員を含めた学校全体へ関わっていく必要があると考える。 学校体制としては,食教育主任をはじめ,生徒と関わる教職員全員が食育を進めていくことが必要であると考える。そのために,校内研修等を活用し,食育への共通理解をすることが有効であると考える。実践を通して,教科や生徒会活動,部活動など様々な学校教育活動の場面で食育をする機会があることが分かった。その中で,教職員はそれぞれの立場からできることを進めていくことができれば良いのではないだろうか。そのような意識を教職員全員がもち,生徒との関わりをもつことで学校全体での食育となると考える。 そして,食育は継続した取組が必要である。食生活を変えることは容易なことではなく,すぐに変容が見取れるものではない。しかし,小中を通した食育を行うことで少しずつ食意識が向上し,行動の変化へと繋がっていくと考える。 今後も生徒が心身の健康を保ち,充実した学校97
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