86 図2-1 知識定着問題 る内容についての問題に,授業の始めまたは終わりの5分程度取り組む。基礎的なものから行い,次第に知識を活用し自分なりの答えを見出すような問題解決的な学習へと発展させていく。 知識定着問題は主に小学校の学習内容とし,中学校での「食生活」の学習がまだ終わっていない学年でも取り組めるようにする。具体的には食品に含まれる栄養素でのグループ分け(赤・緑・黄)や五大栄養素の種類と働きについてである。知識活用問題では,知識活用の疑似体験を行い,知識と日常生活を繋げる。また,生徒の日常生活で起こりうる場面を想定した問題を提示することで,実際の生活でそのような場面に遭遇したときに,授業で自分が考えたことを生かすことができると考える。 図2-1に知識定着問題の例を示す。知識活用問題の具体は次章で詳しく述べる。 また,問題を解いたり考えたりするだけでなく,時には自分の食生活を振返って分析をしたり,今後の食生活について考えたりするなど生徒が自分事として捉えることができるようなワークシートにも取り組む。 家庭科の授業は1・2年生が週に1時間,3年生が2週間に1時間と授業時数は少ないが,定期的にこのような問題に取り組むことにより,生徒は家庭科で食生活以外の内容を学習している期間にも,自分の食生活や栄養について少しでも考えることができる。このような時間を継続的に設けることにより,学校以外の場所,例えば家庭や外出先などでも食生活や栄養のことについて考えられるようになるのではないかと考える。 (2)生徒会活動を通して 生徒会活動では生徒が主体となり,様々な取組を行ったり,情報を発信したりすることができる。中学校 食育 10 食育についても教職員から発信するだけでなく,生徒からも発信できるような取組を行う。また,生徒会活動に食の要素を取り入れることにより,生徒だけでなく教職員の意識の向上にも繋がり,学校全体での取組になると考える。 取組の一つ目は,食育放送の実施である。昼食時間の放送を委員会活動の一環として行っている学校が多いが,その放送を食育放送とし,生徒から食に関する情報を発信する。放送の内容は給食の献立紹介を軸とし,その日の献立の栄養や使用されている食材について,行事食や季節の食材についてなどを紹介する。給食を放送の内容に取り上げることにより,給食の栄養バランスが中学生の昼食の見本になることや,給食には様々な工夫がされていることを知る機会になる。給食を申し込んでいる生徒は,自分が食べているものの栄養バランスや食材の意味について実感することができる。給食を申し込んでいない生徒はクラス内に給食を申し込んでいる生徒がいれば放送の内容について聞くだけでなく,目で見ることはできる。また,食育放送をきっかけに,教職員が給食の教材としての効果を引き出すことにも繋がることが期待できる。 また,給食には野菜を使用したおかずが必ず入っている。給食を教材とすることで,家庭からの弁当を持参している生徒も,給食の栄養バランスを参考にし,「野菜は足りているかな」や「ご飯の量は少なくないかな」などを考えるきっかけになるだろう。 取組の二つ目は朝食調査である。保健関係の取組を行う委員会では,「朝ごはんを食べましたか」や「何時に寝ましたか」などの生活習慣をチェックするような取組を行うことがある。このような取組では朝食,睡眠,運動,排便などの大まかな内容でのチェックになり,生徒の具体的な実態までは見えづらいことが多い。そのため,本研究では特に朝食についての調査を行い,生徒の具体的な実態が分かるようにする。従来行われていたような,「朝食を食べたかどうか」だけではなく,「朝食に何を食べたか」についてもチェックをする。 第2章第1節(1)の表2-1(p.6)より,A校・B校共に朝食を食べていても黄の食品のみで済ませている生徒が多く,赤・緑・黄の食品が揃った栄養バランスの良い朝食を食べている生徒は少ないことが読み取れた。中学生に必要なエネルギーや栄養素をしっかりととるためには,朝食の内容についても考えていかなければならない。そのこ
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