最終稿【今川】
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第3章 実践について 第1節 各教科での実践 (1) 家庭科「衣食住の生活」 家庭科では,食生活の内容において,題材を貫くキーワードとして「食選力」を設定し,授業を展開した。表3-1に学習内容と食選力の視点を示す。なお,一つの学習内容につき,複数の食選力の視点を働かせることができる場合もあるが,主なものを示す。 表3-1 学習内容と食選力の視点(家庭科) 食選力の主な視点 栄養バランス 献立作成 旬 生鮮食品 食品表示 安全 食品の保存,食中毒 安全 環境 よりよい食生活 栄養バランス 相手意識 (11)前掲(4)p.74 (12)前掲(4)pp.74~75 (13)奈須正裕『「資質・能力」と学びのメカニズム』東洋館出版社 2017.5.30 p.151 (14)前掲(13)p.154 (15)前掲(13)p.171 (16)前掲(6)p.16 そこで,1年次の研究で作成した部活動指導資料を2年次の研究においても活用し,目標を達成するために,体づくりという視点で食選力を働かせることを促す。 管理栄養士がしているような難しい栄養計算をするわけではないが,スポーツをするときや試合のときの食事には,どのようなものが適しているのか,選び方のポイントを知ることで,中学生でもできることがあるということを示す。部活動で食に関する指導をすることにより,生徒のアスリートとしての意識が向上したり,指導者の知識が向上したりすることが期待できる。また,生徒が得た知識を家庭で共有することにより,保護者の食に対する意識の変容や向上も期待できるのではないだろうか。 学習内容 夏休みの課題 家庭科で働かせる食選力の視点は,「栄養バランス」ととらえられることが多いだろう。しかし, それぞれの学習内容を,食を選択する際の視点とすることで,「栄養バランス」だけでなく,食選力の様々な視点を働かせることができると考える。 食生活の内容に入って間もない頃の授業では,指導者が食選力というキーワードを意識的に使うようにした。そうすることで,食選力とはどのような力なのかを生徒に理解させ,その視点は様々であることに気付かせることができた。授業を重ねると,生徒から食選力という言葉が出たり,振り返りに食選力というキーワードを使って記述していたりする様子が見られた。 ○夏休みの課題「食選力を働かせた食事作り」 ここでは,「生活に近い場面設定の中で知識を活用させる」「食選力の視点を明確にさせる」ことを取り上げた。授業では,あくまで疑似体験であった食選力を自分の生活の中で実際に働かせることを促す。また,今まで無意識のうちに働かせていた食選力を意識化することも,この課題を設定したねらいである。実際に使用したワークシートを図3-1に示す。 課題に取り組む際,まず生徒にテーマを設定させた。自分や家族の食生活を振り返り,改善したいことや生活スタイルに合わせた内容を設定する図3-1 夏休みの課題 ワークシート なお,この課題は食生活の学習の途中で設定したため,生徒は様々な食選力の視点を獲得している途中の段階である。そのことを配慮し,生徒が働かせると考えられる食選力の視点をワークシートに明示し,選択させるという形式にした。本来は食生活の学習を全て終えた後にこの課題を設定し,生徒に食選力の視点を考えさせることが望ましい。食生活の学習を通じて獲得した食選力の様々な視点を,状況に応じて働かせ,知識を活用させることができると考える。 中学校 食育 7 37

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