食欠食率が高い 36 と考える。そのために,食選力の視点を明確にさせることを行う。 生徒も含め私たち大人も,日常生活で食べるものを選ぶ際,無意識のうちに食選力を働かせていることがあるだろう。目的や好み,価格,量など,いくつかの視点をもとに選択しているはずである。 このような無意識のうちに働かせている食選力の視点を自覚させるためには,言語化したり,可視化したりするなどの工夫が必要となる。その際,指導者が先に視点を示し,その視点に沿って考えさせる場合と,生徒が自分の考えや意見をもつ中で,どのように考え,選択したのかを振り返り,視点に気付いたり,自身が出した結論の根拠を明確にしたりする場合が考えられる。学習内容や生徒の実態に応じて使い分け,どちらにおいても,生徒に「この選択はこのような食選力の視点で考えた」「このような理由で選択した」ということを明確にさせる。そうすることにより,自分の思考が明確になり,根拠をもった選択となる。また,「このような視点で考えるときは,この知識を活用できる」ということを整理することにつながる。 このように,家庭科や社会科,理科等,様々な教科等の学習内容を,食を選ぶ際の視点とすることで,様々な角度から食について考えることになる。このことを通じて,食選力の視点をより多くもつことになり,視野の広い食選力の向上につながると考える。 第2節 授業以外の場面を活用して 授業以外の場面では,生徒の食に対する意識を向上させることを目的として実践を行う。生徒が食について考える時間を少しでも増やすことで,食に対する意識の向上に寄与すると考える。また,教科等における食に関する指導の内容をより自分事としてとらえたり,自身の生活とのつながりを見いだしたりすることにもつながると考える。 (1) 生徒会活動 体健室調査より,学校へ行く日に朝食を「ほとんど食べない」「食べない日が多い」「食べる食べないが半々」と回答した割合は合わせて15.3%であった。その理由として最も多かった項目は「起床が遅く時間がない」が43.9%,次いで「食欲がない」が34.6%であった(16)。また,同調査の朝食に関する項目と生活習慣に関する項目とのクロス集計の結果より,以下の実態が読み取れた。 ・就寝時刻が遅いほど,朝食欠食率が高い ・起床時刻が遅いほど,朝食欠食率が高い ・テレビやスマートフォン等の視聴時間が長いほど,朝・運動時間が短いほど,朝食欠食率が高い 中学校 食育 6 朝食の状況については,家庭環境が大きく関わっていることもあり,生徒へのアプローチだけではその状況が大きく変わらない場合もあるだろう。しかし,生徒自身が毎日朝食をとることの重要性を理解し,そのために生活習慣の見直しを図るなど,できることから取り組むことが必要であると考える。 生徒会活動は生徒が中心となり,活動を進めることができる。そこに,食育の視点を取り入れることで,生徒が主体的に,食について考える機会になると考える。 従来の生徒会の取組は,それぞれの取組が単独で行われているものもあるように感じる。それらをうまくつなぎ,食を含めた生活習慣について考える機会とすることができると考える。例えば,起床時刻と就寝時刻を調査し,早寝早起きを推進する取組と,朝食をとることを推進する取組をつなげ,早寝早起きを推進することができる。また,早く起きることで朝の準備時間に余裕ができるため,その時間で朝食をしっかりととることができると気付ける取組になる。 その他の取組においても,生徒会活動の中心となる生徒やそれを支える教員が,食との関わりを意識することで,多方面から食に関する働きかけを行うことができると考える。 (2)部活動指導 部活動は多くの生徒が所属しており,目標に向けて日々トレーニングに励んでいる生徒もいるだろう。しかし,体づくりができていなければ,そもそもトレーニングを続けることができず,無理をすれば怪我につながる可能性がある。また,試合中に体力がなくなれば,精神的にも厳しい状態に陥ることが多い。試合で活躍するために必要な技術を身に付けるにも,体力を付けるにも,その土台となるのは自身の体である。スポーツをする上で,まず大切なことは体づくりであること,そしてそのために食の面からできることがたくさんあるということを,生徒自身が知る必要があると考える。
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