最終稿【今川】
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第2章 多面的・多角的に考える取組とは 図1-1 本研究の構想 学校における食育は,食に関する指導により推進される。食に関する指導は「給食の時間における食に関する指導」「教科等における食に関する指導」「個別的な相談指導」に大別される。その中の,教科等における食に関する指導については,関連している教科等において,食に関する指導を一層充実させることによって,学校としての食育の充実につながるとしている(11)。また,当該教科の目標を達成する過程に,食育の視点を位置付け,意図的に指導することが重要であるとしている。併せて,食に関わる資質・能力を確実に育成していくため,関連する教科等の特性を踏まえた見方・考え方を適切に働かせているかなど,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を進めていくことの重要性が明記されている(12)。 34 食選力の向上を目指す。そのためには,生徒が食について多面的・多角的に考え,そのことを通じて食べるものを選択する際の視点を多くもつことが必要であると考える。そして,食について多面的・多角的に考えるためには,食に関する内容を取り扱う教科等において,各教科等の学習内容を,食を選択する際の視点とすることが有効であると考える。 例えば,栄養バランスを考えて食べるものを選ぶことは,家庭科に関わる視点である。食に関する内容を取り扱う教科等の中でも,家庭科はその時間数が多い。家庭科では,栄養バランスだけでなく,他にも様々な学習内容を食べるものを選択する際の視点とすることができると考える。 体内に取り込まれた食べ物がどのように消化・吸収・利用されているのかを考えて食べるものを選ぶことは,理科に関わる視点である。日常生活では消化・吸収・利用のことまで考えて食べるものを選ぶ機会は少ないだろう。しかし,部活動等でスポーツをしている生徒にとっては必要な視点となる。試合開始時刻に合わせて,何を食べればよりよいパフォーマンスにつながるかを考える場合,消化・吸収・利用という視点で考えると,より適切な選択ができるだろう。 このように,各教科等で学習した内容と日常生活をつなげ,知識を生かした選択をすることで,状況に応じたより適切な選択となる。そして,状況に応じて視点を変え,食べるものを選択することは,つまり,視野の広い食選力を働かせているということになる。 本研究の構想を図1-1に示す。 各教科等の学習内容を,食を選択する際の視点とする中で,知識を活用させるようにする。その中学校 食育 4 (6)京都市教育委員会体育健康教育室『「中学校給食及び食育の推進に関する実態調査」の結果』2020.3 pp.12~13 (7)藤田智子,加藤紗希『東京学芸大学紀要総合教育科学系Ⅱ 第65集』 2014.2.28 pp.383~389 (8)中山節子,堀尾真理子『千葉大学教育学部研究紀要 第58巻』 2010.3 pp.89~94 (9)野田知子『技術教室 №661』 農山漁村文化協会 2007.8 pp.12~16 (10)前掲(4)p.16 ための具体的な手だてについては,第2章で述べる。そして,教科の授業以外の場面では,体健室調査から読み取れた生徒の実態等に即した実践を行う。生徒会活動や部活動(ここでは運動系の部活動を指す)指導に食育の視点を取り入れ,生徒が食について考える時間を増やすことで,生徒の食に対する意識を向上させることができると考える。 以上のことを踏まえ,本研究では食について多面的・多角的に考えることを通して,視野の広い食選力の向上を目指す。 第1節 各教科等と食育をつなげるために では,具体的にどのような授業改善を進めていくことが必要なのだろうか。奈須は,主体的・対話的で深い学びを実現するための三つの原理として,「有意味学習」「オーセンティックな学習」「明示的な指導」を挙げている(13)。本研究においても,

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