最終稿【今川】
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おわりに 50 このように教科横断的に食育を行うことで,生徒は食というテーマに対し,各教科等の特性に応じた見方・考え方を働かせながら,食について多面的・多角的に考えることができると考える。実践では,食について多面的・多角的に考えることを通して,生徒は様々なことに気付いたり,時には迷ったりしながら,主体的に学習に取り組む様子が見られた。 教科横断的に食育を推進する際に,各教科等をつなぐ重要な役割を担うのは,食教育主任であったり,教科の特性から家庭科教員であったりすることが考えられる。いずれにせよ,教科間で連携を図り,各教科等にどのようなつながりがあるのかを指導者が理解し,意図的につないでいくことが必要であると考える。 そして,生徒会活動や部活動をはじめ,日々の学校教育活動の中で,生徒が食について考える時間を増やすことも,食育を推進する上で大切になると考える。各教科等における食に関する指導の充実とともに,生徒の食に対する意識を向上させることで,各教科等の指導の内容が生徒の生活に生かされるものとなる。 さらに,食育については,本市体育健康教育室から「京の食育通信」が定期的に各学校に送付されたり,選択制給食の献立に工夫がされていたりするなど,身近に教材となるものは数多くある。 実際に,選択制給食の献立表を教材として保健体育科や家庭科等の授業で活用されている事例もある。「京の食育通信」の活用例としては,生徒に配布するだけでなく,終学活の中で担任から話をしたり,学級通信でもその内容について発信をしたり,教室掲示をして生徒の目に触れるようにしておいたりするなどが挙げられる。また,「京の食育通信」には保護者向けの内容も掲載されており,保護者啓発の視点から,家庭での食育にも有効に活用することができる。学校と家庭の両輪で食育を進めることで,知識の習得と生活の中での実践を積み重ね,食に関わる資質・能力をより一層育むことができると考える。 食育は継続した取組が必要である。食生活を変えることは容易なことではなく,すぐに変化が見取れるものではない。だからこそ,日々の食育を積み重ねていくことで,生徒の食に対する意識が向上し,行動の変化につながると考える。そのためにも,学級担任という立場からのアプローチは欠かせないものである。昼食指導については,時間の制約や生徒指導面で配慮しなければならない中学校 食育 20 こともあるだろう。しかし,各教科等の食に関する指導における学びを振り返ったり,深めたりするためには大切な時間である。「生きることは食べること」であり,生徒が生涯にわたり健康で心豊かに過ごすため,「京の食育通信」や昼食時間を活用することで,学校における食育をより充実させていくことができると考える。 子どもたちの食生活を取り巻く現状は,社会の変化とともに,今後も変化をしていくだろう。また,食生活は家庭の影響を大きく受けるため,生徒が抱える食生活の課題も一人一人異なる。学校においては,それぞれが抱えている課題に寄り添いながら,食育を進めていくことになる。学校ではどのような食育を行っているのかを保護者にも発信し,学校と家庭,そして地域が連携しながら食育を進めていくことが望まれる。 今後も,生徒が食についての理解を深め,自身で食生活を管理するようになったとき,適切な選択をすることができるよう,各学校における食育がより一層推進されることを願う。また,本研究がその一助となれば幸いである。 最後に,本研究の趣旨を理解し,教育実践に取り組んでくださった,京都市立西京極中学校と京都市立桃山中学校の校長先生をはじめ,両校の研究協力員の先生方,研究に携わっていただいた先生方,いつも温かく迎えてくださった教職員の皆様に感謝の意を表したい。

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