最終稿【今川】
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図4-6 1年生 イメージマップ 1年生と2年生共に,実践前に多く見られた内容は,これまでの生活経験や小学校家庭科で学習したことに関するものが多かったが,実践後は各教科での学習内容に関するものも多く見られた。 48 イメージマップに反映されている。このことから,生徒にどのような力を身に付けさせたいかを明確にし,授業を展開する必要があると改めて感じた。 1年生が記入したイメージマップでは,社会科で働かせた食選力の視点である,産地や安全,フェアトレードといった内容を記入している生徒が多く見られた。図4-6に1年生が記入したイメージマップを示す。 これらの結果から,3年間の各教科等の学習で獲得した見方・考え方を食選力として働かせることで,より視野の広い食選力を育むことができると考える。本研究では,1年間での変容を見取ったため,1年生から2年生,2年生から3年生と学習を積み重ねることの有効性を見取ることはできなかった。しかし,1年間でこのような変容が見られたことを踏まえると,3年間の学習を積み重ねることにより,より視野の広い食選力を育むことができるといえるのではないだろうか。1年生の学習で身に付けた食選力を2年生でも生かしつつ,2年生,そして3年生の学習で新たな視点を獲得することにより,視野の広い食選力を身に付けることができると考える。 (2)食選力の活用 家庭科の食生活の学習後,自身の食選力についての振り返りを行った。多くの生徒が,食選力が向上したということを記述しており,食に関する様々な知識や技能を身に付ける中で,食選力の向上を感じていた。見方を変えると選ぶものが異なるということや,時と場合に応じて選び方が変わるということが分かり,何を大切にして選ぶのかを考えることの必要性に気付いている生徒が多く見られた。 実際に,生活で活用するようになったという記述も多く見られ,食選力を日常生活で働かせている様子がうかがえた。生徒の記述の一部を以下に示す。 このように,自分で食べるものを選択する際に,今までとは異なる見方をしたり,様々な視点から考え,より適切なものを選ぼうとしたりしている様子が見られた。 しかし,生徒の中には,食選力の視点がたくさんあることは分かったが,実際に自分で食べるものを選ぶ機会が少ないということを記入している生徒もいた。第1章第1節(2)(p.2)で述べたように,生徒の食生活を管理しているのは保護者である場合が多い。実際に自分で選ぶことを経験していない生徒にとって,今の段階で食選力が向上したかどうかは分からないだろう。今後,生徒たちが自分で食生活を管理するようになったとき,中学校の学習で獲得した食選力を働かせる中で,より視野の広い食選力を身に付けていくことができればよいと考える。 (3)教員の食育に対する意識の変容 実践後,研究協力員だけでなく,実践に関わっていただいた教員にアンケートを行った。 食育の視点を取り入れた授業を実施した感想について,以下の回答を得た。 ・いつも部活の補食に持って行くものは,安いもので選んでいたけど,学習をしてからは,選択肢が増え,選ぶものも前とは変わるようになった。家の人とも話をしてみたりもした。 ・母が「今日の夕飯,○○か△△のどっちが良い?」とよく聞いてきて,前は「どっちでもいい」と言っていたが,今は朝・昼にこれを食べたから,こっちの方が良いと考えられるようになった。 ・今まであまり買い物などに一人で行くなどして,食品を選ぶといった機会が少なく,考えることがなかったが,環境や安全,特性などの色々な視点を学び,食事を作ったりしたことで,健康で安全に,そして環境にやさしいものを食べたいという思いが生まれ,食品の表示などを見て食べるようになった。 中学校 食育 18

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