食に関する内容 食料自給率 農業の効率化と食の 安全 生徒は,農業の地域的特色や課題と食料自給率との関連性を見いだし,品目による食料自給率の違いについて理解していた。また,この授業で食料自給率を取り扱ったため,後の授業でも生徒から食料自給率という言葉が聞かれた。 ○アフリカ州の産業と経済 この授業では,アフリカ州の産業の特色を理解させ,アフリカ州の産業と輸出品から,現在のアフリカが抱える問題を考えさせることをねらいとしている。実践では,チョコレートをきっかけに,フェアトレードについて触れ,アフリカの産業や経済の現状についての学習を進めた。そして,本時の学習を踏まえ,条件の異なるいくつかのチョコレートから,自分が買おうと思うものを生徒が選び,その理由を記述するようにした。 社会科においても,日常生活で起こり得る場面を設定し,その中で選択させるようにした。また,授業の中で食品を選択する活動を2回設定した。1回目は授業の導入で行うため,生徒は今までに得た知識や生活経験を生かして選択することになる。2回目は授業の終末で行い,本時の学習内容を踏まえ,再度同じ選択肢から何を選択するかを考えさせた。その際,意見が1回目と変わっても変わらなくてもよいことや,正解はないことを伝え,生徒自身の考えを大切にするようした。また,食品を選択させる際には,なぜそれを選ぶのか,その理由を書かせるようにし,どの場面においても自分なりの根拠をもった上での選択となるように意識させた。 図3-7は,AからEのチョコレートのうち,どれを選択するか,ネームプレートを黒板に貼り,意思表示させたものである。 ちなみにAからEのチョコレートにはパッケージ,価格,量についての情報を提示した。次ページの表3-3に選択肢の情報を示す。 図3-7 社会科 チョコレートの選択 中学校 食育 11 ながり,「こういうことだったんだ」と気付いていることが分かる。他にも,根拠をもって選択することで,より説得力が増すということに気付いたという振り返りが多く見られた。 このように,理科の学習に食という身近なテーマを取り入れることで,理科と家庭科の学習を生徒の中でつなげることができた。また,自身の生活に理科の知識を生かすことの有効性を実感させることができたと考える。そして,家庭科の実践と同様に,状況に応じてどのようなことを考えて食べるものを選択するかということの必要性や有効性を感じさせることができたことから,教科横断的に食選力を育むことができたと考える。 (3) 社会科「地理的分野 世界の様々な地域」 ここでは,「生活に近い場面設定の中で知識を活用させる」「食選力の視点を明確にさせる」ことを取り上げた。 社会科では,世界の様々な地域の農業や産業について学習する授業において,食育の視点を取り入れた。実践を行った授業で取り扱った食に関する内容を表3-2に整理する。 表3-2 学習内容と食に関する内容(社会科) 学習内容 ヨーロッパ州の農業 アフリカ州の産業と経済 フェアトレード 北アメリカ州の農業 以下,それぞれの授業で行った実践について述べる。 ○ヨーロッパ州の農業 この授業では,ヨーロッパ州の農業の地域的特色を理解させ,課題について考えさせることをねらいとしている。実践では,ねらいに迫るために,教科書に記載されている食料自給率の資料を用いた。 ここでは,今後の授業に向けて,社会科の学習内容と食とのつながりを生徒に意識させることを主眼とした。 なお,教科書の資料には,日本とアメリカ合衆国の食料自給率も記載されている。しかし,日本の食料自給率に着目させると,本時のねらいから離れてしまうおそれがあったため,EU域内の食料自給率に着目させ,授業のねらいを達成させることとした。 41
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