図3-6 理科 ワークシート 生徒の記述 ・理科と家庭科をつなげて考えると, 食べた物から栄養素や消化・吸収につながった。 ・ 消化・吸収の学習がこんなに日常生活に生かせる・ 時と場合によって,何を大事にして食事をするか・たんぱく質や炭水化物などが(体内で)どうなるか,その流れを理解することで, 今までコーチにレース前にはあんぱんを食べるといいと言われていた理由が分かった。 中学校 食育 10 40 図3-5 理科 ワークシート (2) 理科「第2分野 動物の体のつくりと働き」 ここでは,「既有知識と学習内容をつなげる」「生活に近い場面設定の中で知識を活用させる」ことを取り上げた。 理科では,食べ物が体内でどのように消化・吸収されるのかを学習する。今までの生活経験や家庭科等の学習から得た食に関する知識と,理科の学習から得た知識を生かし,取り組む問題を作成し,授業で実施した。問題は全て日常生活で起こり得る場面から設定した。理科の学習内容と自分の生活には関わりがあることや,食べるものを選択する際に,理科の知識を活用することでより適切な選択をすることにつながるということを実感させるためである。 実際に使用したワークシートの1問目を図3-5に示す。 これは,試合開始時刻に合わせて何を食べればよいかを,選択肢の中からより適切なものを選択するという問題である。選択のポイントは試合のために必要となるエネルギーをとることができるものを選択するだけでなく,試合開始時刻に合わせて選択することである。ただ単にエネルギーになるものを選択する問題であれば,家庭科の学習内容でも解くことができる。しかし,ここでは消化・吸収の速さがポイントとなる。そこで活用するのが理科の学習内容である。エネルギーとなる栄養素は炭水化物,脂質,たんぱく質の三つである。理科ではこれらの栄養素が体内のどの臓器で消化されるのかを学習している。この知識を生かすことができれば,より適切な選択をすることができるという問題である。 生徒はこの問題を見るやいなや,「これは家庭科では?」という疑問を抱いていた。「食べるものを選ぶ=家庭科」というイメージがあるのだろう。指導者から「根拠に理科の知識を使ってみよう」という声掛けがあったものの,今までの生活経験から得た知識を根拠としていたり,「何となく」という理由で選択したりしている様子が見られた。「自分が食べるならこれ」という理由の生徒もいた。 この段階では,食べるものを選択する際に理科で得た知識を,まだ活用することができていない。そこで,この段階での生徒の意見を根拠とともに聞く中で,この問題のポイントを整理していった。ポイントが分かった生徒は,エネルギーになる栄養素の中でより速く消化・吸収されるものは何かを,根拠とともに説明することができていた。図3-6に生徒の記述を示す。 このような活動を通して,「理科の知識を使うってこういうことか」と気付いている生徒の様子が見られた。 2問目以降の問題は,「食べるものを選ぶ=家庭科」というイメージにとらわれず,理科の知識を活用しながら,問題に取り組んでいる様子が見られた。 授業後に振り返りを記述させた。以下に生徒の振り返りの一部を示す。 下線①より,すでに学習していた家庭科の栄養に関する知識と,理科の知識を食という共通点でつなげていることが分かる。また下線②より,食という身近なテーマの中で理科の知識を生かすことを通じて,生活に生かされる知識として習得することができた様子がうかがえる。生徒の感想には,下線③のような内容の振り返りが多く見られた。この授業を通して,状況に応じた選択の必要性や有効性を感じさせることができたと考える。そして下線④より,今までの生活経験と知識がつ② んだなぁとびっくりした。 ③ をこれからも考えていきたいと思った。 ① ④
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