最終稿【田中】
9/24

第2節 活動のプロセスに注目し,成長を実感す る生徒の育成に向けて (1)「基礎的・汎用的能力」の指標 本研究では各教科の学習において,生徒が「基礎的・汎用的能力」も視点としつつ活動のプロセスに注目して振り返ることにより,成長を実感できるような実践を目指している。しかし,「基礎的・汎用的能力」が,生徒と指導者に初めから意識化されていることは少ないと考えられる。そこで,「基礎的・汎用的能力」を整理した指標を作成した。その内容は,以下の表2-1のとおりである。 この指標は,国立教育政策研究所生徒指導研究センター作成の「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」(17),京都市教育委員会作成の「京都市生き方探究(キャリア)教育スタンダード」(18)を参考にし,「基礎的・汎用的能力」の一例として独自に作成したものである。 また,この指標は生徒・指導者どちらにも活用されるものとして作成している。指導者だけでなく生徒も「基礎的・汎用的能力」の内容を意識化 表2-1 「基礎的・汎用的能力」の指標 中学校 キャリア教育 7 し,共有できる指標となるよう作成した。 濱保らが指摘するように,「基礎的・汎用的能力」はキャリア発達に関わる諸能力として「生涯を通じて必要」であり(19),生徒にとってはこの指標が将来にわたって活用できる視点となる。また,教師にとっては授業計画の際に,目標達成に向けて「基礎的・汎用的能力」が発揮される場面がないかを探る指標になるとともに,授業中に生徒の様子を見取る際の材料としても活用できる。 一方で,活用する際の注意点も挙げておく。まず,この指標に挙げた全12項目は,特に各教科の学習との接点を意識しながら,独自で絞り込んだものである。ゆえに,指標に挙げられた内容だけが「基礎的・汎用的能力」の全てではない。 また,一つの教科の中で,12項目全てを満たさなければならないと考える必要はない。教科ごとの特性や生徒の実態,学校教育目標等を踏まえ,項目をさらに焦点化し取り組むことも考えられる。 キャリア教育は学校教育全体で推進されるものである。指標にある行動指標を意識しつつ各教科・学校行事等との接点を探り,総体として各項目にアプローチしていくことが大切であろう。 81

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る