最終稿【田中】
23/24

本研究では,各教科の学習における振り返りの充実を図った。ある生徒の記述において,自分を振り返ることの大切さについて触れられていたことは,一つの成果としてとらえている。 2番目の記述は,第3章で取り上げた生徒Aがまとめた内容である。数学科の授業においてできることが増え,それが自身の成長の実感や,授業の大切さを実感することにつながっている。 質問③に関連して,「そのために,どんな力が大切だ(発揮したい,伸ばしたい)と感じましたか?」という記述式の質問には,以下の回答があった。 ○行き詰っても何がいけなかったのか,自分を振り返って改善に尽くすことのできる力。 ○前は,できない,と思っていたことがあったけれど,基礎を理解したら,できるようになったことが増えたので,授業で理解することが大切だと感じました。 このような,「できるようになった」という実感こそが,その生徒なりの成長の実感であり,そうした成長を積み重ねることで,授業に対する意欲を高めていくことにつながると考えられる。 一方で,研究協力員には,聞き取り調査を行った。その内容を,以下に質問項目別にまとめる。 ○実践を通して,生徒が変わったと感じる部分 学習に対し見通しをもち,予測して動くようになったと思う。それは「基礎的・汎用的能力」はもちろんのこと,社会科において必要な視点(見方・考え方)も働かせつつ,生徒自身が自分たちで関連付けることができるようになってきたからであると感じる。振り返りについても書きぶりが定着し,間違いなくプラスになっている。 ○実践を通して,良かったことや新たな発見 指導者としての認識が変わったと思う。自分自身の成長が生徒に返っていくことを強く感じた。事前に準備して取り組み,振り返って次につなげることで成長できると,指導者自身が実感した。 また,キャリア教育の視点によって,意識的に5年後,10年後をとらえることができ,それを意識するだけで全然違う(生徒が出会ってはいるが意識できない部分もあるので)。「基礎的・汎用的能力」はだんだんと擦り込まれていくもので,可能性を広げるプロセスの一つであると感じた。 中学校 キャリア教育 21 ○「基礎的・汎用的能力」についての理解 授業等を実施する前にイメージでき,見通しという意味で全然違う。生徒・指導者双方が見通しをもてることで,シンクロするように伝わっていくのだと思う。「基礎的・汎用的能力」の内容については,古くからやってきていることだが明確に見える化したものとして認識・理解している。 研究協力員は実践を通し,「基礎的・汎用的能力」を意識化することで授業等での見通しがもて,それが生徒にも伝わっていくことを実感していた。「基礎的・汎用的能力」が生徒・指導者双方に見通しをもたせることにつながるという気付きを得ることができたのは,本研究における一つの成果であると考える。 本節の締め括りとして,研究の成果をまとめる。本研究では,「基礎的・汎用的能力」を視点として,生徒・指導者双方に付けたい力を共有した。その結果,生徒にとっては活動のプロセスに注目する機会へとつながり,一人一人が自分なりの基準で成長を実感する姿が見られた。加えて,次の活動に対し,意欲を高めている様子もあった。 そして,指導者にとっては,指標を活用しつつ計画段階で意識化することで,見通しをもって授業に臨むことにつながった。また,授業中に生徒が何を頑張ろうとしていたか,成長を見取ったり,価値付けたりする視点としても,「基礎的・汎用的能力」が大きな役割を果たした。 第2節 課題と今後の展望 (1)実践から明らかになった課題 本研究を通して,活動のプロセスに注目し,成長を実感する生徒の育成に向けて,「基礎的・汎用的能力」が大きな役割を果たすことが示唆された。しかし,以下のような課題も明らかになった。 ○指標の活用法及び留意点の蓄積・検証 研究協力校において,「基礎的・汎用的能力」の指標を丁寧に導入していただいた。その結果,生徒にとって指標に示された内容を自分事としてとらえることにつながったが,振り返りの場面における指標の影響力は予想以上に強かった。 実践ではこの点について途中で軌道修正を行い,教科目標に対する振り返りが最重要であることを指導者から明示した。ただ,本研究で理想とした,「基礎的・汎用的能力」を発揮したことで,目標95

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る