最終稿【田中】
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(1)生徒の記述内容から 1年間を通して印象に残った出来事や場面を挙げる項目で,「学業での課題」について記述する生徒がいると予想していなかった。今までの振り返りと重ね合わせれば,課題に取り組む中で将来に向けてより一層成長していこうという意志が感じ取れる。今後は,今回の生き方探究パスポート「あゆみ」に記述した内容を生かし,次学年での取組につなげていくことが大切になるであろう。 以上より,本研究の実践が,生徒が学習面において成長を実感する材料を与えていることが示唆された。また,生徒の記述には,「基礎的・汎用的能力」に関わる内容が多くあり,振り返る際の視点として意識化されている様子もうかがえた。 (2)生徒・研究協力員へのアンケート及び聞き 取り調査から 様々な視点で見ることにより新たな発見につながり,学びが更に深まることを実感できたとわかる。一方で,得た学びをどのようにまとめ,説明するかという点を課題として挙げている。このようにして,自身の成長を踏まえた新たな課題を設定することで,更なる成長に向けて取り組んでいく姿勢を高めることができると考えられる。 これらの実践を経て,この生徒は生き方探究パスポート「あゆみ」に,次のような記述を残した。 第1節 研究の成果 第3章で取り上げた生徒の記述内容から,各校での実践が,生徒・指導者双方への「基礎的・汎用的能力」の意識化につながったと考える。 また,全員ではないが,「基礎的・汎用的能力」を発揮する重要性に気付いた生徒も出てきた。実践途中より,指標の活用を指導者から指示しなくなったにも関わらず,「C-3のように,計画の振り返りをするという考え方はとても大切だと思う」という内容の振り返りもあった。 そして,実践の締め括りとして,生き方探究パスポート「あゆみ」の授業を行った。先述のとおり,「あゆみ」の主な項目は①この1年間で印象に残った出来事や場面,②なりたい自分に向けて,どんな努力をしてきたか,の二つである。 1年次の研究では,学習面に関わる内容が少なく,項目①で2名,②で半分弱ほどの生徒が記述していた。しかし,本研究では,例えばB校において,①で学習に関わる記述をした生徒が24名中6名おり,②では実に19名の生徒が学習面に触れていた。本研究の実践が全てではないが,学習面に注目する生徒が増えたことを確認できた。 もちろん学習面以外の,部活動や学校行事等について記述する生徒も多くいた。その中で,本研究の成果であると考えるのは,1年次の研究と比べ,学習面に注目して振り返る材料を生徒に提供することができた点である。生徒がより多面的に自分を見つめ,成長を実感する機会となった。 内容については,「ノートをうまくつくることができた」という学習方法面について,「なりたい自分に向けて,勉強の計画を立てた」という計画面について,「みんなの前で話すのをがんばった」という授業の場面を思い出しての振り返りがあった。今まで蓄積した振り返りを改めて見ながら,学習面で自身の成長した部分に注目できていた。 また,次のような記述もあった。B校のある生徒は,なりたい自分(学習面)として,「苦手なものでもがんばる」ことを挙げており,社会科(地理分野)に対して苦手意識をもっていた。しかしながら,実践の中で振り返りを積み重ね,例えば毎時間の振り返りでは,指標のD(キャリアプランニング能力)を項目として挙げ,学習内容と将第4章 研究の成果と課題 92 中学校 キャリア教育 18 来とのつながりを実感することができていた。 実践において,この生徒は定期的な振り返りの中で,次のような成長と課題を記述していた。 成長したところ ○様々な視点からとらえることができたので,新たな発見がみつけられた。 今後の課題 ○もう少し短くまとめて,分かりやすいようにする。おこったことを順になるように説明する。 印象に残った出来事や場面 ○学業での課題を見つけた。 今後の課題 ○勉強,未来の自分と向き合いながら生活する。 実践後,生徒を対象にアンケートを実施した。以下に,その結果を順に取り上げ考察を加える。質問は大きく三つで,それぞれ選択式,記述式の項目がある。まずA校(社会科)から紹介する。

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