90 図3-11 グループ活動の様子(いろいろな関数) しょう」と,指導者からの明示的な指導を行った。 また,グラフにおける直線の傾きが,水そうに入る水量の変化の様子を表わしているという,教科目標に迫る内容へアプローチするために,他者に説明する際にはグラフの変化が何を表わしているか具体的に伝えることもポイントとして明示した。まとめると,指導者は本時において,以下の3点をグループで話し合う目的として示した。 ○今までに学習してきた内容を生かすこと ○他のグループにわかりやすく発表できるよう な説明を,自分のグループで考えること ○グラフの値の変化が表す内容について,他者 と意見を出し合うこと 授業では,以下の図3-11のような話し合いの様子が見られ,最後に全体で意見を共有した。 この授業後,生徒が記述した振り返りについて以下に取り上げる。先述した反省点を踏まえたことで,振り返り項目【2】の記述が教科目標に対するものとしてより充実した内容になった。例えばある生徒は,本時の授業で学んだこととして, xが増えてもyが一定になるのが少し分からない所があったのでもう一度振り返りたいと思いました。水そうの中に段差があったりなど何かが入ってたりすると関数の傾きもかわることが知れてよかったです。 と記述した。「xが増えてもyが一定になる」のは,本時の課題でいえば水は出し続けているのに水面の高さが変化していない状況を指す。この状況を作り上げるような水そう(の中にある段差)の設定を考えることが主眼であり,その点についてもう一度振り返りたいと記述している。一方で,段差があれば関数の傾きが変わるという対応関係については,本時を通して理解することができたととらえられる。左段に挙げた指導者の明示したポイントを踏まえ,教科目標に対する振り返りを自分なりに進めている様子がうかがえた。 さらに,先述した生徒A,生徒B(p.14)の振り返りについても見ていきたい。まず,生徒Aの記述内容は,以下の図3-12のとおりである。 生徒Aは,今までと比べ,本時の目標に対する理解度を高く自己評価していた。項目【2】を見ると,本時の課題において部分的に当てはまる内容である,「面積が広くなると傾きが小さくなる」という,教科目標に迫る内容の記述が出てきた。 そして,本時の授業で発揮した指標項目としてA-①(意見の違いに注目して聴く)を挙げ,先述した「図形と相似」の振り返りで挙げた項目と同じであった。項目【4】の記述からもわかるように,課題に対してもっていた疑問について,意見の違いに注目して聴くことで,「なるほどな」と実感を得て学びを深める姿につながっている。 先述したとおり,生徒Aは数学があまり得意でないが,友だちからの意見に注目して聴くことが教科目標の達成に向けて大切であることに気付き,授業において繰り返し行動に移すことで,自分なりに理解を深める様子が見られた。生徒Aが指標項目の一つを活動する際の視点として意識し,活動のプロセスに注目して振り返ったことで,教科内容への理解度の高まりを実感できたといえよう。 次に,生徒Bの記述内容は,次ページの図3-13のとおりである。 図3-12 生徒Aの振り返り(いろいろな関数) 中学校 キャリア教育 16
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