最終稿【田中】
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生徒Aは数学がそこまで得意ではないが,今までに習った比を思い出しながら少しずつ理解する様子がみられた。項目【4】で,友だちの具体的な発言を振り返り,自分にはない考え方を吸収していることもわかる。授業中に,この生徒が「意見の違いに注目して聴く」ことを通して,目標達成に近づくことができたといえるだろう。 88 図3-8 振り返りの内容(A校) いた。授業の文脈で指標が導入されることで,本時における活動のプロセスを思い返し,行動指標と照らし合わせることができたのではないかと考える。今後大切にしていきたい資質・能力として,生徒と共通認識を図ることができたといえよう。 (3)指標を活用した振り返り 指標プリントを活用した振り返りは,前項で取り上げた「図形と相似」の授業から実施された。 この授業において,指導者が事前に意識化した指標項目は,人間関係形成・社会形成能力(人とともに社会を生きる力)である。今回は「友だちと意見を出し合い」と目標に明示したが,より詳細には各項目について次のような意識があった。 A-① 意見の違いに注目して聴く なかなか自力での解決が難しいような生徒であっても,友だちからの意見を,自分の考えとの違いに注目しつつ聴くことで課題解決に迫ることができる。 A-② 自分の考えを正確に伝える 自分で考えることができたとしても,その内容を友だちがわかるよう正確に伝えることが大切であり,協力して課題を解決する下地となる。 A-③ 他者と協働し,意見をまとめる グループで出た複数の意見をまとめる中で,他者と協働することの重要性に気付く。 授業終わりの振り返りでは,これらの項目に注目する生徒が多いのではないかと予想していた。A校において,実際に行った振り返りの内容は,以下の図3-8のようなものである。 この振り返りでは,四つの項目が設定されている。【1】,【2】は本時の目標に対する振り返りであり,【3】,【4】は「基礎的・汎用的能力」に関する項目である。【4】では,授業内容が理解できたと実感できた生徒はその要因について,できなかった生徒は今後に向けて取り組む内容についてまとめることで,「基礎的・汎用的能力」にも注目する機会となるのではないかと考えた。 なお,A校ではこの形式での振り返りを行う授業を各単元から選び,単元ごとに蓄積した。ある程度の期間を空けて同じ形式での振り返りを繰り返し行うことで,前回と比べての変容や成長を生徒がより実感しやすくなると考えたからである。 では,先述の授業においてどのような振り返りが見られたか,2名の生徒(生徒A,生徒B)の記述を取り上げる。まず,生徒Aは以下の図3-9のような振り返りを記述した。 次に,生徒Bの記述について取り上げる。その内容は,以下の図3-10のとおりである。 図3-9 生徒Aの振り返り(図形と相似) 図3-10 生徒Bの振り返り(図形と相似) 中学校 キャリア教育 14

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