最終稿【田中】
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(1)指導者に意識化 (2)指標の導入(生徒に意識化) 図3-7の指標プリントで焦点化して設定された第2節 B校における実践 B校では,第3学年である生徒の実態及び数学科のもつ特性を踏まえ,指標から更に七つの項目に絞り,生徒に提示することとした。数学科を通して生徒に身に付けさせたい「基礎的・汎用的能力」を焦点化することで,それらを示す項目に生徒がより注目しやすくなると考えられる。このようにして,事前に指標の内容について検討し,付けたい力を明確にすることが大切である。 そして,七つの項目を「基礎的・汎用的能力」の指標に設定し,生徒にプリントを配布することにした。以下の図3-7が,A校で作成された「基礎的・汎用的能力」の指標プリントである。 七つの項目について,以下に設定理由を述べる。 「A)人とともに社会を生きる力」は,こちらが提示した指標と同じ三つの項目が設定された。他者とともに協働して取り組むことを,授業の中で大切にしたいという指導者の思いからである。 「B)自分を知る力」は,二つの項目が設定さ図3-7 「基礎的・汎用的能力」の指標プリント(A校) 中学校 キャリア教育 13 れた。難しい問題に直面すると,なかなか解き進められない(結果を出せない)自分に対し自信を失いがちである。こうした実態に即し,活動の結果だけでなくプロセスにも注目しつつ,自分の強みや持ち味,得意な方法等を知ることで,特に肯定的な自己理解を高めることをねらいとした。 「C)課題を見つけ解決する力」は,数学科の特性を踏まえ,計画的に課題を処理・解決するという視点に焦点化して項目を設定することとした。 「D)夢や希望をつくりあげる力」は,根幹である「学校での学びと将来のつながり」に関する項目に焦点化し,一つの項目として設定した。 図3-7のプリント作成を通して,指導者は生徒の姿を思い浮かべながら,「基礎的・汎用的能力」の視点を意識化することができた。このように,授業を通して生徒に付けたい力を事前に明確化しておくことで,授業中に生徒が指標にあるような行動を取った際,指導者から効果的に価値付け,更なる成長を促すことが可能になると考える。 A校では,図3-7で示した指標プリントを,ある数学科の授業において導入することとした。 では,その授業内容について述べる。単元は「図形と相似」,本時の目標は「友だちと意見を出し合い,これまでに学習した比を組み合わせて問題を解決できる」とした。この目標は,少し「基礎的・汎用的能力」に寄せた内容となっている。指標の導入を兼ねつつ,授業に対し積極的な姿勢が見られることをねらい,このような文言とした。 授業で提示されたのは,これまでに学習した比を複数組み合わせなければ解決できない課題である。今までに比べ難易度は高いが,友だちと意見を出し合うことで解決に向かう(近づく)ことが目標である。グループ活動を行う前に本時の目標を再度確認し,最後に全体で考えを共有した。 そして,授業終わりの振り返りを行う前に,生徒へ指標プリント(図3-7)を配布した。指導者は,本時の目標に「友だちと意見を出し合い」と明示したことにも触れながら,数学科の授業において指標に示された視点を意識しつつ授業に臨んでいることを伝えた。そして,今後振り返りを行う際の視点として活用していくことを共有した。 生徒は,指標プリントに対し真剣に目を通して87

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