例えば,アフリカ州を学習する単元での振り返りでは,右段の図3-4のような記述がみられた。 図3-2 生徒の振り返り①(A校) しかしながら,図3-2からわかるとおり,生徒にとって指標の影響力はとても強く,教科目標に対する振り返りが十分でなかった(指導者もそれに関するコメントを返している)。この単元では,「私たちが生きる世界は,どのような世界なのだろうか?」という単元を貫く問いを立てた上で,授業が展開されていた。この時点ではその問いに対する振り返りとなっていることが少なく,いわば本末転倒な内容となってしまっていたといえる。 そこで,次の単元からは,単元を貫く問いに対する振り返りが充実するよう,生徒との共通理解を図った。具体的には,単元を貫く問いを視野に入れつつ,本時の目標に沿った振り返りを積み重ねること,そして目標に迫る際に発揮した行動指標を挙げるという位置付けを指導者から明示した。 その後は,教科目標に対する振り返りを第一とし,特に指示がなくても自分で指標を確認しつつ振り返りを進める生徒の姿がみられた。振り返りの様子は,以下の図3-3のようなものである。 図3-3 振り返りの様子(A校) 図3-4 生徒の振り返り②(A校) 項目 回数(回) 割合(%,N=303) A-1 A-2 A-3 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2 C-3 D-1 D-2 D-3 中学校 キャリア教育 11 この振り返りは,図3-2と同じ生徒のものである。単元を通して,「国や地域が発展するためにどのようなことが大切になるか」をまとめることが教科目標として設定された。記述内容を見ると,協力,経済といったキーワードを取り上げつつ,学習を深めている様子がわかる。図3-2と比較すれば,教科目標に迫るような振り返りの内容になっているといえよう。そして,そうした学びを得る際に発揮した力を,行動指標から選び記入するという位置付けに変わっているといえる。 さらに,指導者は教科目標に迫るような記述の部分に線を引いたり,記述内容の充実度に合わせ判子を押したりして,肯定的に価値付けている。 このような振り返りを,地理分野の学習全体を通して繰り返し積み重ねた。生徒が挙げた指標項目の内訳は,以下の表3-1のようになった。 表3-1 生徒が挙げた行動指標の内訳(地理分野) 50 16.5 33 10.9 42 13.9 12 4.0 21 6.9 22 7.2 68 22.4 22 7.3 19 6.3 8 2.6 4 1.3 2 0.7 85 41.3 18.1 36.0 4.6
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