最終稿【田中】
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辰巳は,キャリアプランニング能力以外の三つの能力を「基礎力」と表現し,それらは経験を通じて獲得されるものであるとしている。本研究では,それらの獲得につながるような行動指標を示し,生徒自身が各能力の重要性,及びそれらを視点としての成長を実感することがねらいである。 そして,キャリアプランニング能力については,意図された学習機会を設けることが必要であると指摘している。各教科の学習において,キャリアプランニング能力を育成することは,あと三つの能力に比べれば難しいといえるのかもしれない。例えば総合的な学習の時間等を活用し,自身の「働き」あるいは「働く」ことについて考える時間を設けることが必要になると考えられる。他には,キャリア教育において大きな役割を果たす職場体験学習も,辰巳が示す「意図された学習機会」としてとらえることができるといえよう。 以上の内容をもとに,この指標を生徒・指導者双方への「基礎的・汎用的能力」の意識化に向けた方策とする。生徒には自身を振り返る視点として,指導者には授業計画における視点や生徒の様子を見取る視点として活用していきたいと考えた。 (2)振り返りを充実させるために 82 では,指標の内容について具体的に説明する。まず,各能力の横に京都市が示す表現も記した。京都市ではそれぞれ,人間関係形成・社会形成能力を「人とともに社会を生きる力」,自己理解・自己管理能力を「自分を知り律する力」,課題対応能力を「課題を見つけ解決する力」,キャリアプランニング能力を「夢や希望をつくりあげる力」と表現している。これらの表現の方が理解しやすい生徒もいるのではないかと考え,指標に併記した。 人間関係形成・社会形成能力は,人との関わりに着目し,「聴く」「伝える」「意見をまとめる」という三つの指標とした。特に,意見の違いに注目することで,他者を尊重する姿勢や,自分の意見を見直す態度にもつながる。例えば授業でグループ活動を設定した際,どのような点を大切にして活動してほしいか,指導者側にはねらいがある。そのとき,「意見の違いに注目してほしい」というねらいがあれば,指導者はそれが人間関係形成・社会形成能力の育成につながる行動となるものとして意識化した上で授業に臨むことができる。また,生徒にも指標が共有されることで,話し合う際のチェックポイントとして活用したり,振り返りの視点としたりすることができると考える。 自己理解・自己管理能力は,自分の良い点を実感することにつながるものである。授業では自分の得意な分野や方法を見つける中で,目標達成に向けて貢献できたと感じることもあるだろう。そして,活動を通して得た達成感を原動力として,次の行動につなげていくことが大切になる。 課題対応能力は,課題解決に向けた一連の取組を振り返る際の視点として働く。効率よく解決できたかということだけでなく,自分が立てた計画を振り返り,次の課題に生かすことも含まれる。 また,課題解決に至らなかったとしても,課題に関わる情報を集めることができたか振り返ることも重要である。このように指標を用いることにより,目標が達成できた,あるいはできなかったという結果だけでなく,以前よりこの部分を取り組むことができたというプロセスに注目することが可能になると考えられる。つまり,生徒一人一人が自分なりの基準で成長を実感する機会につながるのであり,その経験をもとに次の取組へ向かっていくことができれば,活動に対する積極性もより高まるのではないだろうか。 キャリアプランニング能力において主眼となるのは,今学校で学んでいることが将来とつながっているという実感をもたせることである。 このことに関連して,辰巳は四つの能力を次のように説明している。以下に引用して示す(20)。 本項では,授業後の振り返りを充実させるためどのように工夫するかについて述べる。前項に挙げた「基礎的・汎用的能力」の指標を活用するが,以下に挙げる工夫や留意点を踏まえ実践を進める。 工夫としては,指導者による授業前の意識化及び授業中の生徒に対する価値付けである。目標に近づくプロセスにおいて,関係する行動指標があキャリア教育・職業教育特別部会で定義されたこの4つの能力は,端的には,対人基礎力・対自己基礎力・対課題基礎力,キャリアプランニング能力であり,前者の3つの基礎力は,経験を通じて獲得されるものである。 キャリアプランニング能力は,他の3つの基礎力とは異なり,獲得のためには日常的な経験だけでなく,新たな知識の獲得が求められる。小学校段階から少しずつ自らの役割を果たしながら,自身の社会における「働き」や貢献を考える時間を設けるなど,意図された学習機会を設けることが必要だ。 中学校 キャリア教育 8 (中略)

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