図1-3 学校行事でつなぐ 成長ノート 想を図1-2に示す。手だてとしては,次の三つである。一つ目は,「キャリア・パスポートの『はじめ』と『おわり』を活用した授業実践」である。二つ目は,そのはじめとおわりの間をつなぐ「成長ノートの作成と活用」である。三つ目は,児童が振り返りを行う際の,友だちとの「肯定的な言葉がけの取組」である。これらの活動を通して自分の成長について考え,振り返ることで,自己理解能力を高め,自己肯定感を高めることができると考え実践を行った。 図1-2 1年次の研究構想図 まず,キャリア・パスポート『はじめ』で,児童一人一人がこれまでの自分について振り返り,今や将来の自分について考え,記述した。加えて友だちと交流することで,より明確な目標やプロセスを考えることができるようになり,1年間の見通しをもつことができた。次に,定期的に自己の成長を実感するために,学校行事を中心に成長ノートで振り返りを行った。図1-3に学校行事でつなぐ成長ノートを示す。 この成長ノートとは,学校行事のめあてと振り返りを1枚のシートにまとめたものである。自分の成長について書き残すことで,学校行事ごとの(2)キャリア・パスポートの取組を生かして 基礎的・汎用的能力は,各教科等での活動の中で育成される場面があると考えられる。各教科等で付けたい力を育成すると同時に,キャリア教育で付けたい力である基礎的・汎用的能力の育成を図り,自己評価し,成長を実感することが大切である。なお,京都市ではキャリア教育の名称を生き方探究教育として実践を行っている。(以下「生き方探究教育」) この自己評価の活動を充実させる手段の一つとして,キャリア・パスポートの取組を活用することにした。このキャリア・パスポートとは,「児童生徒が,小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について,特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として,各教科等と往還し,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら,自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのこと」である(12)。自らの学習状況やキャリア形成を見通したり,自己評価を行ったりすることで,主体的に学びに向かう力を育み,自己実現につなぐものとして期待されている。これらの活動を意図的に繰り返し行うことで自身の変容や成長に気付くことができ,本研究でねらう自己効力感の高まりにつながると考えられる。 加えて,多角的に自己評価を行うには,自己評価だけではなく他者評価も大切になる。キャリア・パスポートの指導に当たっては「記述や自己評価の指導においては,教師が対話的に関わり,児童生徒一人一人の目標修正や改善を支援し,個性を伸ばす指導へとつなげながら,学校,家庭及び地域における学びを自己のキャリア形成に生かそうとする態度を養うように努めなければならない。」と示されている(13)。対話的な関わりを通して,他者から認めてもらうことで,更なる成長を感じることができ,本研究でねらう自己有用感の高まりにつながると考えられる。 以上のように,キャリア・パスポートの取組を活用することで,自己肯定感を高めるプロセスを実現することが可能であると考えている。 第3節 1年次の研究の概要 (1)1年次の研究 1年次の研究では,児童の自己理解を深め,自己肯定感を高めるために,キャリア・パスポートの取組を活用し,実践を行った。1年次の研究構小学校 キャリア教育 3 55
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