54 とができるのであろうか。自己効力感を高めるためには,子どもたちに成功体験を重ねさせ,達成感を味わわせることが大切になる。そこで以下のような手だてを,日々の授業に取り入れることが有効であると考えた。 まず,PDCAサイクルを意識した授業実践である。なりたい自分について目標をもち,その実現に向けて実践を行う。振り返りでは,自己評価を行い,成長を実感するとともに,更なる成長のための改善点を考える。様々な学習で,このPDCAサイクルを回し,振り返る機会を設けること,気付きをその都度言語化することで自分の成長を実感することができる。 そして,このPDCAサイクルの過程で大切になるのが,スモール・ステップの目標設定である。スモール・ステップの目標設定とは,大きな目標だけではなく,段階的に自分に合った目標をもつことである。その上で実践し,小さな成功を重ねることで,達成感を味わうことができる。 さらには,その目標や達成のための方策を自己選択できるようにすることである。「自己効力感が高い小・中学生はどんな子どもか-子どもの特徴と保護者との関係に着目して-」では「自分で決定する経験の積み重ねや,そこから得られた自己決定力をもった子どもが『自己効力感』が高い」ことが示されている(8)。学習の中で,自分で目標を考え,選択することや,そのためにどのようなことをするか決めること等,「自己選択」することで,学習への意欲や自信につながると考えられる。 以上のような手だてを構じ,子どもたちが活動の中で,自分に合っためあてを段階的に考え選択し,実践を積み重ねる。そして,その活動を振り返り,達成感を味わうことで自己効力感が高められると考える。 (3)自己肯定感の高まりと自己有用感 子どもの自己肯定感を高めるもう一つの側面に着目すると,周りの人から成長を認めてもらい,実感することが大切だと考えられる。つまり他者評価が重要であり,肯定的に他者から認めてもらうことで自己有用感を高められると考える。 自己有用感とは,「自分と他者(集団や社会)との関係を,自他共に肯定的に受け入れられることで生まれる,自己に対する肯定的な評価である。」と述べられている(9)。つまり,自己の存在や行動が周囲から認められている,必要とされていると受け止める感覚なのである。正に自己肯定感を高小学校 キャリア教育 2 めるプロセスの③と②を実現するものと考えられる。この感覚を高めることで自分に自信をもつことができる。 では,どのようにすれば自己有用感を高めることができるのであろうか。具体的な手だてとしては,「肯定的な他者評価」を取り入れることである。人から成長を認められた,人の役に立った,人から感謝されたなど,自分の成長について自信をもって振り返りができるように意図的な他者評価を行うことで,子どもたちに自己有用感を感じさせることができると考えられる。具体的には,昨年度の研究でも行った肯定的な言葉がけの交流を軸に取組を進めたい。活動中や振り返りの場面において意図的に友だち同士が認め合う時間を設定したり,教師からの対話的な関わりや振り返りへのコメントの実践を行ったりする。それらの取組によって,自己有用感の高まりにつなげていきたい。 第2節 キャリア教育の充実 (1)キャリア教育の必要性 平成23年1月31日に中央教育審議会が示した「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方(答申)」(以下「在り方答申」)において,キャリア教育とは「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と定義されている(10)。この社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力が,基礎的・汎用的能力であり,「在り方答申」で,次の四つの能力として示されている(11)。 これらの能力は包括的な能力概念であり,それぞれ独立したものではなく,相互に関連・依存した関係にある。自己肯定感の高まりを目指すには,自分自身の現状を客観的に見つめ,今後の可能性も含めて,肯定的にとらえることが大切である。その意味では,基礎的・汎用的能力の中でも,自己理解・自己管理能力の育成・発揮が重要である。 この能力を基盤として,自身の成長を肯定的に理解し,成長を実感することで,本研究でねらう自己肯定感の高まりにつながると考えられる。 ①人間関係形成・社会形成能力 ②自己理解・自己管理能力 ③課題対応能力 ④キャリアプランニング能力
元のページ ../index.html#4