最終稿【大嶋】
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第1節 どのように自己肯定感を高めるのか (1)自己肯定感を高めるプロセス の二つに分けてとらえられている(4)。 では,自己肯定感はどのようにして育まれるのだろうか。「自己肯定感を高め,自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた,学校,はじめに 第1章 本研究で目指す子ども像 家庭,地域の教育力の向上(第十次提言)」では,自己肯定感を高めるポイントとして, と指摘されている(5)。つまり,自己肯定感を高めるためには,自分のよさを見つめることと周りからの評価という二つの側面から働きかけが必要であることがわかる。そして,自己肯定感を高めることにつながる要素を取り出すと,次の4点になる。①自分の目標を達成すること②達成感を味わい,実感すること③達成を周りの人から認めてもらうこと④これらを繰り返し行うことである。 この①~④を自己肯定感を高めるためのプロセス(図1-1)としてとらえ研究を進めた。 (2)自己肯定感の高まりと自己効力感 自己肯定感を高めるためには,目標を達成し,「やればできる」という自信をもつことが重要である。梶田は「やればできる」という感覚を「自己効力感」という言葉で表現している(6)。この「自己効力感」とは,「何かの行為に対して『自分はうまくできる』という,自分の能力についての期待や自信・確信のような感覚のことを指す」ものである(7)。自分はうまくできる,つまりやればできると考えられるようになることで,肯定的な自己理解につながる感覚である。正に自己肯定感を高めるプロセスの①と②を実現するものと考えられる。 では,どのようにすれば自己効力感を高めるこ 図1-1 自己肯定感を高めるプロセス 小学校 キャリア教育 1 急速な社会の変化の中,子どもたちは持続可能な社会の担い手となるよう自らの可能性を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けることが求められている。この自らの可能性を発揮するためには「自分のよさや可能性を認識できること」が必要であり(1)子どもたちに自己肯定感を育むことが重要である。 しかし,日本の子どもの「自己肯定感」については,内閣府の調査「今を生きる若者の意識―国際比較からみえてくるもの―」の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」の結果(2)から,諸外国の若者に比べて低いことが指摘されている。中でも「自分には長所がある」「自分は役に立たないと強く感じる」の項目では,いずれも自分に自信がないとする回答が多く見られた。子どもたちの自己肯定感が低く,自分に対して自信がないままでは,自分の成長を実感し,次への意欲をもつこともできないと考えられる。そのため,本研究では,キャリア教育を通して,子どもの自己肯定感を高める研究を進めていくこととした。 自己肯定感とはどのようなものなのか。一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会では,自己肯定感を「自己価値に関する感覚であり自分が自分についてどう考え,どう感じているかによって決まる感覚」と述べている(3)。 また,教育再生実行会議においては, 勉強やスポーツ等を通じて他者と競い合うなど,自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる自己肯定感と,自らのアイデンティティに目を向け,自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感 他者との協働のなかで,子供たちが自分の役割を果たすとともに,子供たちが集団又は個人の目標を達成した際に,周りの大人が認めることにより,成功体験を感じさせるという一連の取組を継続的に行い,子供たちの発達段階に応じた対応が重要である 53

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