最終稿【大嶋】
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かけをすることが度々あった。教科のねらいとキャリア教育の二つの視点で子どもの様子を見つめたときに,活動中には子どもの多くの成長があることがわかった。そのことで,活動中に,子どもの成長を認める声かけをすることができるようになった。 本研究を通して,キャリア教育のイメージが変化し,様々な教科や生活場面で指導者が意識して,実践を行うことができるようになったこと,それとともに児童にも意識させて取り組ませることができるようになったことが聞き取り調査からわかった。 第3節 よりよい指導を目指して 2年間にわたるキャリア教育の研究実践を通して,子どもの姿からは,次のような成果を見ることができた。 1点目として,日々の授業や学校行事において,小さな成功体験を積み重ね,成長を実感することで,次の活動への自信や意欲が高まった。2点目として,その自信や意欲が高まったことにより,これまで以上に教科のねらいにも迫ることができた。3点目として,キャリアレンジャーのように,キャリア教育で付けたい力を可視化したことで,自分の成長を見る視点が広がった。これは児童側だけではなく,指導者側の意識の変容にもつながった。 このように,キャリア教育の視点から各教科等の学習で,また,学年を越えて継続して実践を行うことで,更なる自己肯定感の高まりが見られると考えられる。これらの取組は小学校段階だけではなく,中学校,高等学校においても,継続して行うことでより効果が見られるはずである。その第一歩となるのが,小学校と中学校のキャリア教育の接続である。京都市では,中学校ブロックを単位に「育てたい子ども像」の共有を行い,その実現に向けて様々な取組が行われている。その中で,キャリア教育で付けたい力を小・中共通の視点としてもち,日々の授業の中に取り入れることで継続した取組が可能になると考えられる。 本研究で,お世話になった小学校・中学校では,生き方探究パスポートの取組の導入を機に,9年間を意識して,キャリア教育で付けたい力の共有が行われ,各教科等で意識して取り組もうとされている。このように,9年間の縦のつながりを意識して取り組むことで,更に自己肯定感を高めてい72 小学校 キャリア教育 20 くことができるのではないだろうか。育てたい子ども像の共有を行い,社会的・職業的自立に向けて必要な力である基礎的・汎用的能力の育成を目指した取組が多くの学校で実践されることを願っている。 おわりに 2年間にわたって自己肯定感を高めるキャリア教育の研究実践を行ってきた。これらの実践は,1年単位で,児童の変容を見取ることは非常に難しいものであった。特に,自己肯定感の見取りについては,まだまだ課題が見られる。しかしながら,アンケート調査や児童の様子の変容などから,少しではあったが子どもの自己肯定感の高まりを見ることができた。本研究で行った実践は,継続して行うことで更なる自己肯定感の高まりへとつながると考えられる。そして,本研究では,今年度から導入されたキャリア・パスポートの取組を取り入れた実践例を示すことができた。この実践が,各校のキャリア教育推進の一助となり,キャリア教育が更に充実することを願っている。 本研究の趣旨を理解し,協力してくださった京都市立岩倉北小学校と京都市立池田小学校の校長先生をはじめ,自らの学級での姿を調査対象として協力してくださった研究協力員の先生方,いつも温かく迎えてくださった両小学校の教職員の皆様に心から感謝の意を表したい。

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