実践は,A校5年1学級,6年1学級,B校6年2学級の計4学級で行った。6月に両校共に生き方探究パスポート「わたし」の実践を行い,1年間の自分のめあてを考えさせた。その内容から児童の実態を把握し,研究実践の計画を立てた。 第3章 実践の実際 (14) 野田俊郎『アドラー心理学を語る4 勇気づけの方法』 創元社 2016 P.24 60 図2-7 2年次の研究構想図 れ,そこでの頑張りや成長を認め合えるようにする。一般的には,いいところ見つけとして実践されていることが多い。学びの中で友だちの頑張りや成長に目を向けさせ,互いのよいところを見つけながら学習を進める。 また,この活動は実践中だけではなく,振り返りの場面においても有効である。活動を通して自分が頑張っていたことや成長したことなどについて肯定的な言葉をもらうことで,自分の成長を更に実感したり,自分では気付いていなかった成長に気付いたりすることができると考えられる。 ここまでに述べてきた内容を踏まえ,自己肯定感の高まりを目指す,本研究の構想を図2-6のように表した。 初めに,児童が活動前と活動後の成長に気付くために,PDCAサイクルを意識した授業実践を体育科で行った。体育科では単元を通して,繰り返しPDCAサイクルを取り入れやすいからである。加えて,教科の学びの中に,基礎的・汎用的能力が発揮されている場面があることに気付かせるため,小学校 キャリア教育 8 的確にその場面をとらえて指導者が価値付けを行い,児童に意識させるようにした。 その後,PDCAサイクルやキャリア教育で付けたい力について意識できるように,国語科書写においても実践を行った。体育科同様に,単元を通してPDCAサイクルを繰り返し展開するのに適しているからである。このように体育科と国語科書写において,PDCAサイクルを意識し,実践することで,児童に学習過程を定着させることができるとともに,他の教科にもつなげていけると考えた。 最後には,生き方探究パスポート「あゆみ」で1年間の自分の成長を振り返る。 これらの活動を通して,自己肯定感を高めるプロセスを生かし,子どもの肯定的な自己理解を促していく。表3-1は,A校・B校の実践計画である。 表3-1 実践の全体の流れ 第3章では,これらの実践の内容について述べる。体育科の実践は第5学年,国語科書写の実践は第6学年の内容である。 第1節 自己効力感を高める実践内容 (1)PDCAサイクルを意識した実践 ア A校 第5学年「マット運動」(全7時間) における実践から この単元では マットの上で基本的な回転技や倒立技に取り組み,それぞれの技について自己の能力に合わせてより安定してできるようにするとともに,その発展技に挑戦することをねらいとしている。また,できるようになった技を連続したり組み合わせたりして楽しむこともねらいである。 ねらい①の時間では,今できる技で連続技や組み合わせ技に挑戦する。ねらい②の時間では,少し頑張ればできそうな技に挑戦する。既習の学習
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