最終稿【藤本】
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日本の地域的特色の単元で習得した知識が,九 (13)。 102 知識については,生徒が学習の過程を通して個別の知識を学びながら,そうした新たな知識が既得の知識及び技能と関連付けられ,各教科等で扱う主要な概念を深く理解し,他の学習や生活の場面でも活用できるような確かな知識として習得されるようにしていくことが重要となる。(下線は筆者による) 見方・考え方は,物事を理解したり,思考したりしていく際の視点や方法である。見方とは,事象をとらえる際のいわば着眼点であり,考え方とは,事象をとらえる際に他の事象と比べたり,関連付けたりすること,いわば解決に至るための思考方法ということである。この記載の要点を抽出すると,見方・考え方は, ・教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすもの ・教科等の学習と社会をつなぐもの ・学習や人生において自在に働かせることができ るもの である。様々な場面で問題解決の方法戦略として,見方・考え方を発揮できるようにすることは,「学ぶことは社会でも役立つ」という意識の醸成につながるものとして考えられる。 (2) 生きて働く知識を発揮できるようにする 今回の改訂で示された三つの資質・能力を,第1章第1節(1)で示した。どの資質・能力も,学んでいることと社会で生きていくこととの接点が意識されている。本研究では,この三つの資質・能力のうち,生きて働く知識・技能,その中でも特に,知識に着目する。総則編の解説には,生きて働く知識について以下のように述べられている本研究では,この記述に依拠し,生きて働く知識を,他の学習や生活の場面でも活用できるような知識と定義付けて,その習得と発揮を目指す。 授業で習得した知識が,生活の中での問題解決に生きて働かせることができれば,先に示した見方・考え方同様,学ぶことは社会でも役に立つという意識を醸成することができると考える。 また,上記の囲みの下線からは,生きて働く知識は,新たな知識が既得知識と関連付けられて見いだされるものであるととらえることができる。これはどのようなことか,図1-2を用いて具体を示し,そのイメージを共有しておく。 州地方で学習した知識と関連付けられ,「地質は農作物に影響を与える」という,新たな知識が生み出されている。この知識は,他地域の農業生産物を考える際の手がかりになったり,理科や技術家庭科(技術分野)の学習内容と関連付いたりして,内容理解を促すことも考えられる。 このように,他の学習や生活場面でも活用できるような知識が生きて働く知識である。 (3) 見方・考え方と生きて働く知識の整理 新学習指導要領等では,見方・考え方と生きて働く知識を含めた資質・能力との関係について,密接に関わり合うものの一線を画すものという文脈で説明されている。しかし,これらは,様々な場面で転用可能という点で共通しているがゆえに,見方・考え方の枠組みに入るものとしてとらえるべきか,生きて働く知識の枠組みとしてとらえるべきか,整理しにくい場合がある。次のような場合である。 「北海道の石狩平野でどうして稲作が盛んなのだろう?」という問いに対して,ある生徒が地図帳を開いて火山の分布を確認しながら「北海道は火山が多いのにどうしてかな…しかも教科書に不向きな泥炭地って書いてある」とつぶやいたとしよう。この意見は,図1-2の学習成果に基づくもの稲作 三角州 下流における砂粒のちがい 川の上流と 高くて 単元B 険しい 「九州地方」 で得た内容的知識 「日本の地域的特色」 で得た内容的知識 畑作 果樹園 扇状地 傾斜 が急で 流れが速い 島国 造山帯 単元A 生きて働く知識 地質は 生産される 農作物の種類 を決める 手がかりになる さつま 畜産 いも 粒が荒く 水はけ がよい地層 シラス 火山灰 台地 阿蘇山 や桜島の噴火 図1-2 個別の知識が関連付けられて,生きて働く知識が 習得されていくイメージ 中学校 教科指導 4

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