・何を理解しているか,何ができるか (生きて働く「知識・技能」の習得) ・理解していること・できることをどう使うか ・どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか (学びを人生や社会に生かそうとする はじめに 第1章 研究主題について (未知の状況にも対応できる 「思考力,判断力,表現力等」の育成) 「学びに向かう力,人間性等」の涵養) 小学生の頃に抱いていた「わかったときって嬉しい!」「勉強していることが役立った!すごい!」というような,心の内から湧き出る気持ちをいつまでも見失わないでほしい。そんな気持ちを抱きながら,学習していることと社会で生きることの接点に学ぶ意味を見いだし,未来を主体的に生き抜いていく人になってほしい。 それが願いであり,目指すべき生徒像である。 前回の学習指導要領改訂から数えて10年以上が経過している。その間だけを見ても,「こんな授業を,こんなふうにすれば,求められる力を効果的に培うことができる」という実践がたくさん提案され,一定の成果を挙げている。 しかし一方で,「これ覚えてどうなるの」「でもテストあるから仕方ない…」「こんなこと知らなくても生きていける」「暗記科目は嫌い…」というような生徒の声が聞こえてくることも依然として少なくない。 学ぶ意味を見いだすことができないどころか,勉強は試験で点数をとるためのもの,覚えること,大して役に立たないもの…。そんな意識を生徒が強くもっている印象はぬぐい切れない。 本研究はこの一因を,義務教育の社会科の時間のうち,およそ後半半分を占める後期課程350時間の学習に見いだし,学ぶ意味の自覚に働きかける方策を提案していこうというものである。 第1節 なぜ生徒に学ぶ意味を問うのか (1)求められる資質・能力との関わりより 中学校学習指導要領(平成29年告示)(1)(以下,新学習指導要領)では,育成すべき資質・能力を,次の三つの柱でまとめている。 今後,初等中等教育段階において育成すべき資質・能力の中で,我が国の児童生徒については,学習意欲や自立の意識に課題があることを踏まえ,単なる受け身の教育ではなく,主体性を持って学ぶ力を育てることが重要であり,リーダーシップや,企画力・創造力などのクリエイティブな能力,意欲や志を引き出す指導についても特に重視していく必要がある。 あわせて,人として他者と支え合ってより良く生きるための思いやりや優しさ, 感性など豊かな人間性に関する普遍的 な教育についても,重視する必要がある。 中学校 教科指導 1 このように示される前段の平成26年3月,有識者による「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会の論点整理」(2)には,以下の記述がある。 これは,三つの資質・能力の柱のうち「学びに向かう力,人間性等」に関わるものとしてとらえられよう。この資質・能力について新学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編(以下,総則編の解説)では,「『どのように社会や世界と関わり,よりよい人生を送るか』に関わる『学びに向かう力,人間性等』は,他の二つの柱をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素である」(3)として説明している。 つまり,学習していることと,社会で生きる自分との接点に学ぶ意味を見いだすことは,三つの資質・能力をつなぎ,総体としての確かな学力がバランスよく醸成されていくことに関連していると考えられる。 (2)進む授業改善の成果と課題より 次のページの冒頭に示す表1-1は,全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙の質問項目の中から,二つを抽出したものである。2016年と2019年における京都府の小学6年生,中学3年生の数値を比べている。 2016年の調査というと,言語活動の充実(4)が主な改善事項の一つに掲げられた前回の改訂から8年が経過した時期である。既に,今回の改訂に向けた中央教育審議会教育課程特別部会による論点整理(5)(以下,論点整理)も示され,アクティブラーニングや主体的・対話的で深い学び,資質・能力などを視点にした授業改善が進み始めた頃である。 99 (下線は筆者による)
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