最終稿【藤本】
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図4-3 実践を始めた頃のワークシート ※は筆者が追記 実践前のワークシートと,このワークシートのどちらが良いというものではない。注目したいのは右上の※の部分である。 課題1:内容的な知識を習得するための方策 A校では実践前から授業においてワークシートが使用されていた。実践前に使用されていたワークシートは前半と後半に分かれていて,前半は教科書見開き2ページの中から生徒が理解しやすいように要点が抽出されていた。一部書き込みながら授業が進み,プリントの後半では,資料を読み取ったり,事象の理由を考えたりして自力解決する場所が設けられているものであった。裏面には,内容的な知識に関する確認問題が印刷され,それが次回の授業までの宿題というのが基本的な学習の流れであった。 本実践においても引き続きワークシートを用いて授業を進めた。下の図4-3は,指導者が本研究の趣旨を理解し,それを具現化すべく実践を始めた頃に使用したワークシートである。 ※ 文章に記載された内容的な知識 2年社会 補足プリントとなっている部分に,実践を始めた頃の指導者の思いが感じられる。このことについて,指導者は次の3点から説明している。 ①これまでの授業の進め方が急激に変化すること に対する生徒の戸惑いへの配慮 ②勉強が苦手な生徒への手だてとなる,要点をま とめたワークシートの必要性 中学校 教科指導 21 ③基礎基本と言われる内容的な知識を取りこぼし てしまうのではないかという不安 実践前の授業は基本どおり,教科書の見開き2ページを順番どおりに確実に進めていくスタイルであった。それが実践を始めると,単元内の順番を変えたり,ときには1時間で3ページ分の内容が詰まっていたりする授業計画もあった。また,単元Bを学習しているのに単元Aの内容と比べたり,単元Cの事象を予想したりするというスタイルは,生徒にとっても指導者にとっても大きな変化である。①の生徒の戸惑いに関しては,事実,ある生徒が授業の変化に対する不安を指導者にこぼすこともあった。今でこそ生徒の様子を見ていると慣れてきている感もあるが,A校では研究理論に則した学習活動を部分的に取り入れつつ,これまでの進め方とのバランスを保ちながら授業を進めている。 ②や③については,主体は生徒と指導者の違いはあるものの,共通するのは内容的な知識の習得に関する課題である。B校の2年生では,この内容的な知識の習得に関して,毎時間,冒頭5分~7分を使って予習テストが実施されている。 問題解決型の授業を進める過程で,解決に必要な情報を生徒自ら取捨選択しながら内容的な知識を習得していくことが理想である。とは言え,勉強が苦手な生徒にとってはハードルの高いことである。また,受験やテストに必要とされる基礎基本となる内容的な知識を取りこぼしていくのではないかという指導者の不安も共感できる。この2点については,内容的な知識をもとにして方法的な知識の習得・発揮を目指す本研究において克服すべき課題である。 課題2:予想に関する指導の方策 本研究においては,以下の三つの学習活動を軸にして授業を構成した。 ■方法的な知識を習得するために ・①異なる事象を比べて共通性を見いだす ・②異なる事象を関連付ける ■方法的な知識を発揮するために ・③未知の事象を予想する 実践を振り返って,①~③を進める際に「難しさを感じた」と指導者が述べたのは③についての困りであった。これはA校・B校の指導者に共通する声であった。予想することに関しての課題は二つ挙げられた。 119

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