図3-18 日本の諸地域で培った方法的な知識を発揮して 実践例② 日本の諸地域のまとめ ア:海に面している国と接していない内陸国では工 業が変わるから イ:標高が高い国であると,生産できるものが限ら れてくるから ウ:つながりのある国が近くにあるのと遠くとで は,生産できるものも変わってくると思うから エ:鉄道や空港,高速道路などがどこに走っている かによって生産するものが変わってくるから 上の図3-18の問題は,日本の諸地域をすべて履修した生徒が,未知のことを予想するために日本の諸地域で学んだ方法的な知識を発揮することができるかどうかを見取るものである。 見知らぬ国の盛んな工業を予想する手がかりとして,位置に着目するとなぜいいのかを問うた。作問時,指導者との間でどんな見えるーぺを使うとよさそうかも含めて問うことも検討したが,拡散する答えの採点基準が曖昧になることを考慮してこの問題に至った。生徒たちの解答例ア~エを下の囲みに記す。 中学校 教科指導 17 ・ア~エの解答は,どれも位置という同じ見方に基づいて考えた結果であり,その結果は他の事象をとらえる際にも役立つ生きて働く知識である。またウやエは,位置という見方と他地域とのつながりという見方,距離や交通網という見方とを関連付けて生み出されている。さらに,解答例からはうかがい知ることはできないが,ア~エは,どれも生徒たちの頭の中で,九州や関東,近畿,あるいは1年時に学習した何かしらの内容的な知識をもとに,統合したり関連付けたりするという考え方を発揮した結果ともいえる。 ペーパーテストの記述ではあるが,本研究で定義した方法的な知識(生きて働く知識,見方,考え方)を発揮する姿を見ることができたと感じている。 授業とテストを通して,方法的な知識を習得したり発揮したりした結果,学習に対する意識はどのように変容したのだろうか。その成果と課題,今後の展望について順に述べる。 115 第4章 実践を通して見えてきたこと
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