図3-12 12月実施の生徒アンケート ①太平洋側で降水量が多そうだから ②首都 東京に向けた近郊農業が盛んそうだから しかし人口が都市に集まりすぎるため農家が少なそう だと思う。 図3-13は北海道地方の1時間目の様子である。 予想するという学習活動は,この実践のように,意外と 図3-11 中部地方のまとめで未習の関東地方の事象を予想する ・中部地方で扱った近郊農業などという既習の重要語句,つまり内容的な知識を用いることができているかどうかという見方だけを働かせない。 ・位置や気候,人口,面積などに着目し,それらをつなげ るなどしながら予想を形成することができているか,つ まり思考の過程で方法的な知識を子どもたちが働かせる ことができているかどうかという見方を働かせる 図3-10の下線部から,中部地方の産業が気候や位置,距離などによって構成されていたことをもとにしたまとめであることがわかる。下線部の記述自体は,他地域の産業をとらえる際にも使える方法的な知識の性質をもつものである。しかしこの時点では,これを書いた生徒自身が,中部地方に限定した内容的な知識のまとめとして認識しているのか,中部地方で学んだ,各地の産業をとらえる際に使える方法的な知識として認識しているのかはわからない。この例のように,他の事象を考える際にも使える方法的な知識になり得ることを書いているものの,生徒自身が方法的な知識であると認識しているかわからない記述は,他の生徒からも散見された。そこで,漢字一文字でまとめる活動に加え,中部地方の単元末の学習活動の一つとして,次に学習する未習の関東地方の事象を予想するという学習活動を設定した。図3-11は,ある生徒の記述を筆者が打ち直したものである。 生徒の予想をフィードバックする際に指導者が留意したポイントは,次のとおりである。 ・関東地方の予想の正解・不正解という見方は働かせない。 単元をまたがって行うこともあれば,単元冒頭の時間に単元を貫く問いを設定し,単元の残り時間を検証に充てることもあったり,学習内容の共有→予想→検証→まとめという1時間の一連の流れの中に位置付けたりするなど,様々な場面で実践した。なかでも地域Aのまとめで,未習の地域BQ:社会とはこういう教科だ!自分の言葉で表現すると… 中学校 教科指導 15 の事象について予想するという学習活動は,生徒たちの中にその地域を学習することだけが目的ではなく,更なることを考えるための手段でもあるという認識を促す手段として有効であると感じることができた。 以下の生徒の記述(12月に実施したアンケート)はそのことをうかがわせるものである。 Q:どんなことができるようになった?どんな力がついた? また後日,関東地方の単元の学習を進めていた際,その時間に学習したことと前単元のまとめとして記述した自分の予想を照らし合わせて「ここ,違った」「わたし,あってたかも」と近くの席の生徒同士がつぶやき合う声が聞こえてきた。 その予想自体が次単元の学習を進めていく際,自分なりの視点になることにも大きな意味があると感じることができた。 図3-13 生徒の予想の思考過程を見えるーぺを用いて デパートの物産展のちらしから,なぜ北海道は食の宝庫なのだろうという単元を貫く問いを共有したあと,その問いの予想を立てた。写真は生徒が発表する予想の思考過程を指導者が価値付けている場面である。 第2章第2節(1)で述べたように,予想の際には意図した資料などは示さず,生徒が学習経験や生活経験に基づく知識をどのように関連付けて説明しようとしているのか,どのような視点に着目して説明しようとしているのかに焦点を当てて,113 価値付ける 農業
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