最終稿【藤本】
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図3-6 九州と東海の農業を比べてわかったこと(生徒B) 図3-5 九州と東海の農業を比べてわかったこと(生徒A) 110 図3-4 生徒Aが作成したウェビングマップ 中学校 教科指導 12 える際に役立つような方法的な知識の習得に高めることを意図して「以前に学習した九州の農業と,東海の農業を比べてわかることは何?」と生徒に追発問した。 下の図3-5は,問いに対する生徒Aの考えである。先に示した図3-4のウェビングマップをまとめた同じ生徒Aによるものである。 別の生徒Bは,次のように記述した。 記述に見られる「自然環境を生かした農業」や 「技術で自然環境を補う農業」「気候や地形の特色を利用した農業」「交通網を利用し需要を高める農業」は,本来,各地の農業を考察する際に役立つ方法的な知識といえる。しかし生徒A・Bは,あくまで九州地方,東海地方の農業の特色という内容的な知識として認識している可能性が高い。 原因は2点考えられる。東海地方で農業が盛んである理由をウェビングマップでまとめたあとの追発問とそれをまとめるワークシートの文言である。「以前に学習した九州の農業と,東海の農業を比べてわかることは何?」とは問わず,「以前に学習した九州の農業と東海の農業をまとめるとどんなことがわかる?」と問う。その上でワークシートを「九州地方は…」「東海地方は…」というように固有名詞が主語ではなく,「農業は…」有効な土地利用の違いを生む要因になっているという気付きが表現されている。関東地方の学習を通じて,他地域の事象をとらえる際にも役立てることができそうな方法的な知識として習得していることを感じさせるものである。 しかし,「人口の多少や密度に着目することで,土地活用の在り方を考える手がかりになる場合がある」というような,より一般化された方法的な知識として習得するためには,先の例と同様,手だてが必要であることが課題として感じられた。 (2)関連付けてつなぐことを通して 単元「日本の諸地域-中部地方」の2時間目の実践である。「東海地方ではなぜ農業が盛んに行われているのだろう」という問いに対して,生徒はウェビングマップでまとめるという学習活動に取り組んだ。下の図3-4は生徒Aの成果である。 各自がまとめたものをグループ内で説明しあって共有したのち,指導者は生徒がウェビングマップでまとめたものをもとに「関連付けて考えると,東海地方の農業がさかんに行われる理由が見えてきましたね」と説明した。思考過程(考え方)を価値付けたのである。次いで,東海地方で盛んに行われる農業が,気候や交通網,位置,距離,人口など多面的な要素から形づくられていることを,生徒のウェビングマップと見えるーぺを照らし合わせながら確認した。 ここでウェビングマップを文章化して学習を終えると,生徒の学びは「東海地方における農業」という内容的な知識の習得の域にとどまる。それがこれまでの実践の課題であった。そこで「東海地方で農業が盛んな理由」から,他の地域をとら

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