最終稿【藤本】
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筆者「でも,交通網は黒板に二つないけど,自分で足して 生徒「だって高速道路とか電車でつながっているから人が 集まって, 高いビルがいるようになると思ったし, 野菜が得意(野菜の生産が盛ん)なのは,高速道路 とかがあって,周りからはやく野菜を運べるから。」 筆者「すごいなぁ!最後にもう一つだけ聞かせて。関東地 方以外でも交通網が発達しているまわりって野菜を つくってそうかな?」 下の図3-1は,生徒たちの意見をもとに指導者が 図3-1 関東地方(1時間目)の板書 二つの事象の理由を比べることで見いだされる共通項は,他の事象をとらえる際にも有効な方法 関東地方において都心部にビルが多い理由と,野菜生産額が1位である理由を比べることで,人口という共通項を見いだし,それが都市と郊外の 図3-3 関東地方(1時間目)の振り返り(活字は筆者) 題を確認することで,生徒が方法的な知識を発揮することを目指すための指導と評価の一体化を図るのである。 (14) 国立教育政策研究所 教育課程研究センター『「指導と評 価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』2020.3 p53 京都市立中学校の2校(以下「A校」「B校」)で授業実践を行った地理的分野の実践である。 第1節 方法的な知識の習得を目指す実践 (1)比べて共通性を見いだすことを通して 単元「日本の諸地域-関東地方」の1時間目では,都心部に高層ビルが多いことと野菜生産が1位であることを比べる学習活動に取り組んだ。二つの共通項から,関東地方の特色の一つに人口の多さや人口分布の偏りがあることを見いだし,その特色が,関東地方の他の事象にどのような影響を与えているかという単元を見通す問いを共有することがねらいである。授業で扱った主たる問いは,次の三つであった。 ・なぜ都心部で高層ビルが多いのか ・なぜ関東地方では野菜の生産額が1位なのか ・理由を比べてわかることは何か 板書したものを筆者が打ち直したものである。 ベン図の中心 同じうちわ(=見えるーぺのこと)があるのは 人口だけだったから」 書いたの?」 生徒「それは…わからない…作る場所の広さとか 買う人がどれだけいるかにもよるんじゃない?」 中学校 教科指導 11 ベン図の中心 本時の振り返り 109 第3章 実践の具体 的な知識として生徒に認識されたのだろうか。 以下は,生徒のワークシートの抜粋である。 図3-2 二つの理由を比べてわかったこと 図3-2の振り返りは,人口密度や交通網の発達が,関東地方における二つの事象を生み出す要因になっていることを表現しているものの,方法的な知識の習得にまでつながっているとはいえないものである。授業後,これを記述した生徒と会話した内容の一部が下の囲みである。 筆者「今日の授業はわかった?」 生徒「真ん中(=ベン図の中心)は自分で書けた。 このやりとりから,見えるーぺが学習理解の支援になっていることがわかる。また,方法的な知識につなげるためには,比べて共通性を見いだす活動に加え,「他の地域でもあてはまることか」などの追発問や何らかの活動の必要性を感じた。 別の生徒は,次のように振り返りを記述した。 圧とう的に人口・人口密度が高いからこその都市部 と郊外の土地の有効活用の違いが分かった。

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