次の説明文は,ある国で見られる伝統的な住まいや料理に □地図中の は赤道であるという知識 □赤道に近いほど気温は高く,離れるほど 気温は低いという知識 □それぞれの国はどのようなところにあるか, 内容的な知識 □説明文中の情報と地図情報を比べて 方法的な知識 □人間の生活は,自然環境を克服したり, 108 図2-5「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する 参考資料 位置に着目するという見方 関連付けるという考え方 利用したりして形づくられているという知識 体化」のための学習評価に関する参考資料(14)に掲載されている問題(図2-5)を例にして共有する。 「用語や語句,理由を覚えることが社会科の勉強だ」という内容的な知識ベースの学習観をもっている生徒は,この問題に戸惑いを感じるかもしれない。説明文中のオンドルなど聞いたこともないし,地図のア~エの国をすべて知っていなければできないのではないかと不安になる。 オンドルや国名を知らなくても,その国がどこかを特定できた生徒は,意識的か無意識かどうかはわからないが,次のような内容的な知識と方法的な知識を発揮している。 人間の生活は,自然環境を克服したり,利用したりして形づくられているという方法的な知識がついての説明です。このような伝統的な生活が見られる国とは,どこの国ですか。選択肢ア~エのうちから最も適切なも の選び,その記号を書きなさい。 〔説明文〕 この国では,かまどで温められた空気を床下に通す オンドルとよばれる床暖房システムや,白菜などの 野菜と新鮮な海産物などの食材を併せて用いた漬物 などが有名です。 「床暖房システムがあるということは,寒さを克服しないといけない時期がある地域だ」という気付きを促す。同時に「新鮮な海産物が食材になるということは,海に近いという自然環境を利用できる地域だ」という気付きにもつながる。地図中ア~エの国名ではなく,国の位置に着目すると,そうした条件に該当するのは「エ」しかない。 問題で扱っている題材を,授業でそのまま取り扱っていないことが前提になるが,この例をもとに,内容的な知識を再生する問題から方法的な知識を発揮する問題に近づけていく条件を整理すると,下の図2-6のようになる。 これらすべてにチェックが付いたとしても,正解にたどり着くために,見方・考え方や生きて働く知識といった方法的な知識の習得・発揮につながらない問題があるかもしれない。あくまで,チェックが付くほど方法的な知識の習得や発揮につながる問題になる可能性が高く,チェックが付かないほど内容的な知識の再生問題になっている可能性が高いというものである。 チェックすることで,内容的な知識に関する問題ばかりになることを防ぎ,方法的な知識の発揮に関する問題をテストに位置付けるための一助とする。また,方法的な知識を習得・発揮する授業を目指しているにも関わらず,テストは内容的な知識の再生に偏っていないか,授業で付けようとしている力とテストで測ろうとしている力のちがいを,指導者が客観視するきっかけにもなる。チェックをたくさん付けた問題の正答率が低かった場合には,日々の授業が内容的な知識の習得に偏っていたかもしれないという指導者の自省を促すことができるのではないだろうか。 つまり,五つのチェック項目に照らして自らの問□授業で扱っていない情報が含まれる。 □内容的な知識がなくてもできる,もしくは必要となる 内容的な知識が少ない。 □内容的な知識が答えではなく,問題を解くための 材料になっている。 □情報の読み取りや取捨選択を伴っている。 □正解にたどり着くために,見方/考え方/生きて働く知 。 図2-6 問題作成チェックシート 識を理解していることが必要である。 中学校 教科指導 10
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