最終稿【藤本】
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・なるほどAさんは『人口』に着目して,日本や中国, ・Bさんは『位置関係(距離)』に着目して,そこか ・Cさんは『面積』に着目して日本やアジアの国々と ・Dさんは南アメリカ州で学習したことを今回の問い とつなげて,『政策』に着目して解決しようとして いるのですね。 B:日本との距離が近いので,輸送時間も短く,輸送費 C:日本では作る場所が限られていることも関係してい D:ブラジルが外国企業を誘致するための制度を整えて A:日本でも人口の多い都会ほど店が多くあるように, 中国やインドは人口が多く,消費者や労働者がたく さんいるから 用も比較的安くすむから るのではないかな いたように,その国で生産した方が企業にとって有 利な制度があるのかもしれない に予想する活動を通して,生徒たちは意識的か無意識か定かではないが,方法的な知識を発揮する。 未知の問いに対する一見あてずっぽうのように見える予想の思考過程で発揮されている方法的な知識を,指導者は,例えば次のように見えるーぺを用いて可視化して価値付ける。 可視化による思考過程の価値付けによって,問題解決の際に生徒たち自身が方法的な知識を役立てていることの意識化を図る。更なる未知の問いに対して「人口に着目すると…」「距離は…」というように,生徒が見通しを立てて意図的に解決に向かうことができることを目指すのである。そうなれば「学習の中で身に付けていることは,いろいろな場面で使えそうだ」という気持ちを高めていくことができると考える。 (2) チェックシートを用いて問題作成する 社会科に対する印象を生徒に聞くと「暗記ばかりで嫌い」「暗記だから好き」「これを暗記する意味がわからない」「授業でいっぱい考えているけれど,テストでは結局,全部覚えないといけないから…」という類の意見がよく聞かれる。生徒にこうした思いを抱かせているものとして,暗記したことをそのまま再生すればできるペーパーテストの問題の存在が大きいことは,経験上,私たち大人も感じるところがあるのではないだろうか。 授業で身に付けている内容的な知識を覚えていればできる問題だけでなく,方法的な知識の習得や発揮に関わる問題をペーパーテストに加えることで,学習していることは役に立たないという否定的な意識を軽減できるのではないかと考える。 方法的な知識に関する問題とはどのようなものか,国立教育政策研究所による「指導と評価の一インドを比べて予想を立てたのですね。 ら時間や費用をつなげて考えたのですね。 比べようとしているのですね。 中学校 教科指導 9 107 第2節 方法的な知識の発揮を促すために (1)予想する 本研究では,問いに対して特に資料を示さず,自由に予想する場面を大切にする。社会科は資料が重要であり,「資料のない予想など単なるクイズだ」「あてずっぽうだ」というとらえ方もできる。社会科では他の教科領域に比べると,資料を根拠に考察することが特に多い。問いに対する自分の考えを形づくるために,資料から情報を読み取り,集めた情報の中から取捨選択したり,必要な情報を結び付けたりしながら論理的に考えを表現することは大切である。そうした活動は,自由に予想したあとの検証の場面で行えばよいと考える。 資料を示さない状況で,生徒が予想する場面を設ける意図について,具体を示しながら説明する。 例えば「なぜ日本企業はアジア州に多く進出しているのだろう?この資料をもとに考えてみよう」と問うとともに,アジア各国の平均賃金が資料として提示された場面を想定してみる。 資料提示によって,生徒の中から「日本と比べて人件費が安いので生産費用を抑えることができるから」という意見は出ても,次に示す生徒A~Dのような意見は出てこない。 資料が先に提示されることで,A~Dのような世の中ではそれも正解といえるものを制限したり,資料が不正解にしてしまったりする可能性もある。これでは,学習していることが社会でも役に立つという意識の高まりにつながりにくい。またA~Dの意見は,既習の学習内容や生活経験の中で習得してきた方法的な知識,内容的な知識を関連付けたり,比べたりして思考した結果である。自由

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