下のウェビングマップは太郎さんが乾燥した地域のくらしについてまとめたものである。「遊牧をしながらの生活」は図中ア~オの中の どこに関連付けるのがよいか,記号で答えなさい。 生徒A「人口が多いからかな。消費者や労働者がたく 生徒B「日本との距離が近いからかな。近くなら輸送 106 図2-3 内容的な知識を関連付ける問題 さんいることになるし,日本でも人が集まる 都市ほど会社も多いような気がする」 に時間もお金もかからないから」 また,テストにおいても,図2-3のような既有の内容的な知識を関連付ける問題を通して,関連付けるとはどういうことかについて理解を促す。 (3)思考過程を価値付ける 本研究において方法的な知識に位置付けているものに,見方・考え方がある。第1章第2節(1)で述べたように,総則編の解説では「見方・考え方は教科等の学習と社会をつなぐもの」と述べられている。学習していることは社会でも役に立つという意識を高めることを目指す本研究にとって,見方・考え方は重要な要素である。 生徒たちが見方・考え方を発揮する場面において指導者が留意する点について,具体を示しながら以下にまとめる。 例えば「なぜ,日本企業はアジア州にたくさん進出しているの?」と発問したとする。生徒A・Bは次のように答えたとしよう。 自分の考えを形成するために,生徒Aは人口を着眼点にして,それを生活経験と比べたり関連付けたりするという見方・考え方を発揮しているし,生徒Bは,着目した日本との位置関係(距離)を時間や経済性と結び付けるという見方・考え方を発揮していることがわかる。しかし,生徒たちが見方・考え方を意識的に発揮しているか,無意識のうちに発揮しているかどうかはわからない。 学んでいることは社会でも役に立つという意識を高めるには,指導者の働きかけによって,生徒が意識的に問題解決の方法戦略として見方・考え方を使いこなせるようにし,その有用性を認識させる必要がある。この例の場合「人口密度や距離,時間,費用に着目すると,問題の解決に近づくことができる場合があるんだ」という気付きを促す必要がある。そのために本研究では,生徒たちが何を考えたのかという結果もさることながら,その結果がどのように導かれたのかという思考過程を指導者が価値付けることに重点をおいて実践を進める。 次に示す図2-4は,指導者が生徒の思考過程を 可視化しながら価値付けるために,通称「見えるーぺ」と呼んで実践途中から使用したものである。 思考過程を可視化することによって,様々な問題解決に役立つ方法的な知識の習得を生徒に促し,更なる未知の問題解決の際に意識的に発揮できるようする。つまり見えるーぺは,方法的な知識の習得と発揮をつなぐツールである。 授業における生徒と指導者のやり取りの中で,生徒の考えが,どんな方法的な知識を発揮したことによるものなのか,思考過程を即座に価値付けていくことは指導者にとって容易なことではない。その一助としても機能する。自他の発言や記述がどのような方法的な知識の発揮によるものか,教室前方に一覧提示されている見えるーぺから生徒自ら選択して思考過程をメタ認知する活動も取り入れる。 図2-4 生徒の思考過程を可視化して価値付ける “見える―ぺ” 中学校 教科指導 8
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